社会保険料は月末退職だと損？本人がすべき手続きの方法や必要書類も解説

退職を考えている方は「いつ仕事を辞めると社会保険料で損をしない？」「国民健康保険や国民年金保険に加入する手続きは？」など、疑問を持っているのではないでしょうか。社会保険料の支払いは退職日によって異なります。また、離職後は速やかに保険や年金の手続きをしなければなりません。このコラムでは、退職日別の社会保険料の支払い例や手続きのやり方を解説。退職時にやるべきこともまとめたので、参考にしてください。

月末に退職すると社会保険料で損をする？

月末に退職した場合、社会保険で損をするとは言い切れません。離職のタイミングによって退職月の手取り額は増減しますが、月末の退職が損か得かは個人の状況によって異なります。退職日と社会保険の関係を確認し、自分にとって良いタイミングを見極めましょう。

社会保険の概要や加入条件などを確認したい場合は、「社会保険とはどんな制度？アルバイトやパートでも加入対象になる？」もチェックしてみてください。

退職日と社会保険資格喪失日の関係

社会保険の資格喪失日は、退職した日の翌日です。たとえば、12月29日に退職した場合、12月30日の資格喪失日に社会保険の被保険者でなくなります。

社会保険料が給与から天引きされるのは、資格喪失日が含まれる月の前月分までです。12月29日付けで退職すれば、11月分までの社会保険料が天引きされます。

退職のタイミングと社会保険支払いの例

離職のタイミングによって、退職月の社会保険料の負担が異なります。退職日と社会保険料の負担について、月初・月中・月末とケース別に具体例をまとめました。

1.月初に退職した場合

月初の1日に退職するケースでは、社会保険の資格喪失日は2日です。資格喪失日を含む退職月は、社会保険料の負担が発生せず、前月分までが給与から控除されます。

社会保険料が翌月に控除されている場合、4月1日に退職すると4月に支払われる給与から3月分の社会保険料が天引きされます。

2.月中の20日付けで退職した場合

月中に会社を辞めると、退職月の社会保険料は必要ありません。たとえば、5月20日付けで離職した場合、社会保険の資格喪失日は5月21日で、社会保険料が天引きされるのは4月分までです。

翌月の給与から社会保険料が控除される会社では、5月20日に退職すれば、5月分の給与から4月分の社会保険料が引かれるでしょう。

3.月末に退職した場合

月末に退職するケースでは、翌月の初日が社会保険の資格喪失日です。退職月の間は被保険者なので、離職する月の分まで社会保険料が天引きされます。たとえば、10月末に退職すると10月分も社会保険料の負担が必要です。

月末退職のケースで、社会保険料が翌月の給与から天引きされているなら、控除額に注意が必要です。月末締めで当月中に給与が支払われる場合、退職の前月と退職月の2ヶ月分の社会保険料が離職した月の給与から天引きされることがあります。

退職日が平日か休日かで社会保険料は変わる？

退職日が平日・休日で社会保険料の負担は変わりません。退職した曜日に関わらず、資格喪失日を基準として社会保険料の負担額が決まります。
年収と手取りの関係や社会保険料については、「年収と手取り額の違いとは？税金や社会保険料の計算方法と平均額を紹介」もご参照ください。

退職日が月末以外だった場合、次の社会保険の加入時期は？

月末以外に離職した場合、退職日の翌日から転職先で働く場合は、すぐに社会保険の被保険者になれます。たとえば、6月10日に退職して6月16日から新しい会社で働く場合、転職前の会社での社会保険料の支払いは5月分までです。6月分は転職先の会社の給与から社会保険料が天引きされます。
転職が決まっていない場合は、国民健康保険や国民年金に加入し、6月分の保険料を納めましょう。失業後にやるべき手続きは、「失業したらやることは？年金・保険の手続き・失業手当の受給手順も解説」で確認できます。

退職が決まったら本人が行う社会保険の手続き

社会保険とは、以下の5つのことを指します。

• ・健康保険
• ・年金保険
• ・介護保険
• ・雇用保険
• ・労災保険

上記のうち、退職するときに自分で手続きを行う必要があるのは、健康保険と年金保険です。

健康保険の切り替え

厚生労働省の「我が国の医療保険について」に明記されているように、日本の医療制度はすべての国民が何かしらの公的医療保険に加入する「国民皆保険制度」です。

退職して社会保険の加入資格を失った直後に次の会社で働き始める場合、転職先の健康保険に加入するため、自分で手続きする必要はありません。しかし、再就職までブランクがある場合は、「国民健康保険への切り替え」「社会保険の任意継続」「家族の被扶養者へ加入」のいずれかの方法で保険に入る手続きを行います。

健康保険に加入しないと、医療機関を受診した際に医療費の全額を支払わなければなりません。健康保険に加入していれば医療費の自己負担は3割までで済むので、退職の際は手続きを忘れないようにしましょう。

退職後の健康保険の手続きについては、「退職後に健康保険に入らない選択肢はある？加入方法や必要手続きを解説」でも詳しく解説しているので、あわせて参考にしてみてください。

参照元
厚生労働省
我が国の医療保険について

任意継続の手続きと必要書類

退職後も会社で加入していた健康保険を継続したい場合は、「任意継続被保険者制度」を利用しましょう。退職まで継続して2ヶ月以上の被保険者期間があり、退職後20日以内に手続きすれば利用可能です。

任意継続を希望する人は、「任意継続被保険者資格取得申出書」や「被扶養者異動届（扶養家族がいる場合）」を全国健康保険協会や健康保険組合に提出します。支払いの案内があれば、期日までに保険料を納付してください。

任意継続の加入期間は、退職から2年までです。離職前の健康保険料は会社と折半ですが、退職後は保険料を全額自己負担する必要があります。

国民健康保険の加入手続きと必要書類

任意継続せず、家族の扶養にも入らない方は、国民健康保険に切り替えましょう。国民健康保険に加入する際は、退職日の翌日以降に居住地の市役所や町村役場で手続きをします。

世帯主が手続きを行う場合、マイナンバーを確認できる書類や本人確認書類、資格喪失証明書など、必要なものをそろえて退職から14日以内に役所の保険年金業務担当に提出してください。

参照元
日本年金機構
主な届書様式の一覧

被扶養者になる手続きや必要書類

「年間収入の見込み額が原則130万円未満」「扶養する本人との続柄が3親等以内（本人または配偶者の曾祖父母、叔父・叔母など）」といった条件を満たしている方は、家族の扶養に入るのも一つの手です。その場合、保険料を自分で支払う必要はありません。

家族の扶養に入るときに必要な書類は次のとおりです。

別居の家族の扶養に入る場合は、申請月から3ヶ月分の通帳のコピーや振り込みの控えなど、対象者名義と送金額を確認できるものを用意しましょう。配偶者や子ども以外で同居中の家族の扶養に入るときは、世帯全員分の住民票（続柄入り）が必要です。

必要書類をそろえたら、社会保険資格喪失日から5日以内に家族の会社の担当者に提出しましょう。「扶養家族とは？対象となる人と適用条件」では、扶養家族の概要や条件を詳しくまとめています。

退職後は厚生年金保険の切り替えも必要

退職する場合は、年金の手続きも必要です。従業員は会社を通して厚生年金（第2号被保険者）に加入しており、退職すると資格を失います。退職してから期間を空けずに再就職する場合は、次の会社で再び厚生年金に加入できますが、すぐに就職しない場合は国民年金保険への切り替えが必要です。

「数ヶ月後には就職するから切り替えはしなくても良い」と手続きを怠ると、将来受け取れる年金が少なくなる恐れもあります。年金保険料の「未納期間」を作らないためにも、手続きを忘れないことが大事です。

国民年金へ加入する場合の手続き方法

国民年金に加入する際は、退職の翌日から14日以内にお住まいの市区町村の役所で手続きを行ってください。手続きは本人または世帯主が行います。窓口へ行くときは、基礎年金番号が分かる書類（年金手帳や基礎年金番号通知書など）を持参しましょう。

厚生年金を国民年金に切り替えるタイミング

厚生年金と国民年金は退職・転職のタイミングによって、以下のように切り替わります。ここでは、日本年金機構の「会社を退職した時の国民年金の手続き」を参考に表をまとめました。

参照：日本年金機構「会社を退職した時の国民年金の手続き」

配偶者の扶養に入る場合は、配偶者が勤務先の担当部署へ連絡し手続きを行います。
厚生年金を国民年金に切り替える予定がある方は、ぜひ「厚生年金から国民年金への切り替えはどうしたらいい？」もチェックしてください。

参照元
日本年金機構
会社を退職した時の国民年金の手続き

退職後の社会保険に関する注意点

退職後、社会保険の被保険者でなくなったら、時期や保険料に注意して健康保険と年金の手続きを行いましょう。ここでは、退職の際の社会保険に関する注意点をまとめました。

社会保険の切り替えの時期を守る

社会保険の切り替えは、期限が決められています。たとえば、健康保険の任意継続の期限は、資格喪失日から20日以内。国民健康保険や国民年金保険には、資格喪失日から14日以内に加入しなければなりません。

期限を過ぎると任意継続を申請できなくなったり、延滞金が発生したりする恐れがあるため、注意が必要です。国民健康保険の手続きが遅れた場合について、「退職後の国民健康保険加入手続きが14日を過ぎたら？ほかの保険との比較も」で解説しています。

1ヶ月未満で退職しても社会保険料を支払う必要がある

社会保険料は月単位で計算します。日割りではないので、1ヶ月未満で退職した場合も1ヶ月分の保険料を支払わなければなりません。加入のタイミングも同様です。

たとえば、4月10日が入社日の場合、資格取得日は入社日になるものの、保険料は1ヶ月分を請求されます。4月1日に入社しても、10日に入社しても、金額は同じです。

退職金に社会保険料がかかる場合がある

離職時に一時金として一括で受け取る退職金は、退職所得として扱われるため、社会保険料がかかりません。しかし、国税庁の「退職所得となるもの」によると、引き続き働いている人が受け取る賞与のような性質を持つ退職金は、給与所得とみなされます。

たとえば、在職中に給与や賞与に加えて支払われる退職金は、給与所得とみなされて社会保険料の控除対象となる場合があります。社会保険料がかかると退職金の手取りが減るため、事前に確認しておきましょう。

参照元
国税庁
退職所得となるもの

同月内に退職・入社するなら二重支払いに気を付ける

年金保険料については、月の途中で退職し、同月内に再就職した場合に双方の会社で二重に支払うことはありません。その場合は、新しい会社での引き落としが優先されるため、前の会社で徴収した保険料は還付されます。

しかし、健康保険は二重支払いが必要な場合があります。前述のとおり、社会保険料の計算は月単位です。同月内に入社・退職・再就職をすると、健康保険料の支払いが2ヶ月分になるので注意してください。

退職後に再就職しない場合に行う手続き

社会保険のほか、会社が従業員の給与から天引きして納税していた住民税や所得税に関しては、退職後は自分で手続きを行います。

住民税は自分で納税する

住民税は、前年の所得額に応じて納税額が決まる仕組みです。退職後に収入がなくても、前年に収入があれば住民税の支払い義務が生じます。

住民税額決定のスケジュールに伴い、1月から5月に退職した場合は最後の給料の支払いに合わせて、1年分の住民税が徴収されるでしょう。社会保険料と合わせて数ヶ月分の住民税が天引きされるため、最後の手取り額は会社に在籍していたときよりも少ない傾向があります。
6月以降に退職する場合は、自宅に住民税決定通知書が届くのでそれに従って支払ってください。

年度末に確定申告をする

退職した年の年末時点で無職の場合は、翌年の2月から3月に自身で確定申告を行う必要があります。確定申告の期間はその年によって変動する可能性があるので、事前に確認しておきましょう。

所得税は、会社員の場合毎月の給与から天引きされ、実際の年収に応じて年末調整を行い納税する仕組みです。退職後、確定申告をしないと所得税の納税額に過不足が出るので、注意しましょう。また、退職後にフリーランスや自営業になった場合も、確定申告は必須です。

退職した年内にほかの会社に転職し、年末時点で在籍していれば、確定申告を行う必要はありません。退職した会社の源泉徴収票を提出すると、転職後の収入と合わせて納税してもらえます。

失業手当の受給手続きをする

就職する意思はあるものの、転職先が決まっていない場合はハローワークで失業手当の受給手続きをしましょう。失業手当の手続きをするには、ハローワークの窓口で求職を申し込む必要があります。その際、離職票と雇用保険被保険者証が必要です。

ハローワークでの手続き方法や必要な持ち物について「ハローワークで失業保険の手続きをするために必要な持ち物や書類とは？」のコラムを参考にしてみてください。

社会保険だけじゃない！退職時のやることリスト

退職する際は、社会保険の手続き以外にも、業務の引き継ぎや備品の返却などやるべきことがあります。下記を参考に、退職にまつわる手続きをスムーズに進めましょう。

退職届を提出する

退職を決めたら、直属の上司に意思を伝えたうえで、会社に退職届を提出しましょう。退職の申し出や退職届を提出するタイミングについては、就業規則を確認しておくのが無難です。
退職届の提出時期や流れについては、「退職はいつまでに伝える？退職届を出す時期や必要な手続きも詳しく解説」のコラムもあわせて参考にしてみてください。

在職中に業務の引き継ぎをする

担当していた業務の引き継ぎも、退職の際にやるべきことの一つです。業務の引き継ぎは、退職日の3日前を目安に済ませておくと良いでしょう。
担当していた業務のマニュアルを作成したり、取引先に挨拶と後任者の紹介をしたりと、引き継ぎに必要なことを行い、円満に退職できる準備を整えます。

退職時に会社に返却するもの

退職するときは、会社から貸与されているものを返却しなければなりません。具体的には、下記のようなものです。

• ・社員証
• ・名刺
• ・健康保険被保険者証
• ・パソコンや携帯電話など

そのほか、文房具のような消耗品も含め、会社に関わるものはすべて返却する必要があります。企画書や報告書など、機密情報や個人情報に関わる重要書類も返却の対象です。また、健康保険被保険者証は、退職した翌日から使えなくなるので、速やかに返却しましょう。

退職時に会社側から受け取るもの

退職時に会社から受け取るもののなかには、社会保険の手続きに必要なものもあります。

• ・離職票
• ・​​雇用保険被保険者証
• ・​​源泉徴収票
• ・年金手帳
• ・健康保険資格喪失証明書

離職票と雇用保険被保険者証は、ハローワークで失業手当の手続きをする際に必要です。会社が従業員のものを預かっているのが一般的ですが、入社後すぐに本人に返却されている場合もあります。

源泉徴収票は転職先が決まっている場合、新しい会社で提出を求められるでしょう。転職先が決まっていない、あるいはフリーランスとして働く場合は、確定申告で自分の所得額を確認する際に使用します。
年金手帳も、転職先の会社に提出するのが一般的。厚生年金から国民年金へ切り替える場合は、手続きのために必要です。

「健康保険資格喪失証明書」は社会保険の被保険者ではなくなった証明になります。国民年金や国民健康保険への切り替え手続きに必要となるほか、転職が決まった場合は会社に提出しなければなりません。退職の際は、必要書類を受け取っているか必ず確認してください。

退職後は社会保険料を考えて計画的に転職活動しよう

退職後、社会保険の資格を喪失して被保険者でなくなると、任意継続の保険料や国民健康保険料、国民年金保険料を全額自己負担しなければなりません。収入が安定しないなかで転職活動を進めるのは不安にもつながります。離職の際は、事前に保険料の負担を考えたうえで、計画的に転職活動を進めましょう。

「社会保険や年金の手続きをしながら転職活動するのは大変？」「社会保険の手続きが面倒だから在職中に転職活動をしたい」といったお悩みをお持ちなら、転職エージェントのハタラクティブにご相談ください。
ハタラクティブでは、経験豊富なキャリアアドバイザーがきめ細やかにヒアリングしながら、企業選びや書類作成のサポートを行い、転職活動を支援しています。今の会社に退職の意思を伝えるタイミングや、退職の際に必要な手続きなどについてもアドバイスが可能です。

求人探しやスケジュール調整はすべて代行しますので、社会保険の切れ目なく転職したい方にピッタリです。また、若年層を対象とした転職エージェントなので、経験やスキルより人柄重視で採用する企業が多い傾向にあります。「スキルに自信がないけれど転職を迷っている」という方も、ぜひご相談ください。

退職と社会保険に関する疑問を解消するQ＆A

ここでは、退職や社会保険に関してよくある質問をQ＆A形式で回答していきます。

退職後の社会保険の手続きが遅れるとどうなる？

社会保険の手続きが遅れると、任意継続の申請を受け付けてもらえなかったり、延滞金がかかったりする可能性があります。期限を確認し、必ず期間内に手続きを済ませましょう。退職後にやるべきことが分からない方は、「退職後の手続きは何をする？期限や順番、必要書類を分かりやすく解説！」のコラムも確認してみてください。

退職後、扶養に入った場合の社会保険料は？

退職後、扶養に入ると健康保険料を負担する必要がなくなります。また、配偶者の被扶養者になると国民年金の第3号被保険者として扱われるため、国民年金の支払い義務もありません。
「国民年金は扶養の場合どうなる？社会保険制度の仕組みを解説」では、扶養に入っている人の国民年金について詳しくまとめています。

月末の退職で社会保険料がお得になる？

健康保険を任意継続したり、国民健康保険や国民年金に加入したりする場合は、月末の退職で保険料の自己負担額を抑えられる可能性があります。たとえば、月中に退職して健康保険を任意継続すると、退職月は保険料を全額自己負担しなければなりません。
一方、月末退職なら辞める月の保険料も会社と折半です。任意継続について知りたい方は「健康保険の任意継続とは？国民健康保険との違いや手続き方法」もチェックしてみてください。

社会保険料が未払いの状態で退職するとどうなる？

何らかの理由で社会保険料が未払いの状態で会社を辞めると、退職後に請求されるでしょう。社会保険料の負担が心配で早く転職先を決めたい方は、ハタラクティブにご相談ください。