はじめに

深刻な社会問題であるDV。加害者も過去の虐待経験者であるなど、負の連鎖が課題とされています。この連鎖を防ぐための支援に取り組んでいるのが、女性と子どもの居場所ラフェリーチェ（運営：特定非営利活動法人 DV対策センター）です。

本コラムでは、同団体の活動内容について詳しくご紹介していきます。

概要

すべての女性と子どもたちが夢と希望を育んで生きていける社会を目指して、DV・虐待・貧困の連鎖を防ぐ活動を行っています。
自身もDV被害を受けた経験を持つ代表が避難する際に、公的シェルターへの受け入れを断られた経験から、同じ境遇にある人を助けたいとの想いで団体を立ち上げました。
2019年5月に任意団体ラフェリーチェを立ち上げ、2020年3月には特定非営利活動法人DV対策センターを設立。
主に公的シェルターから断られるなど、行き場を失った母子や若者を受け入れるシェルター及び自立サポート付のステップハウスの運営、居場所支援・学習支援・食事支援、当事者の再発防止のためのセミナー開催と食支援等で、当事者を包括的に支えています。また、外部でも啓発を行い、潜在的な被害者を救うことにも寄与。同団体の取り組みに共感したサポーターやボランティアの協力のもと、日々の活動に尽力しています。
DV・虐待被害者の安全を守り救済するとともに、被害者の心のケアを細やかに行うことで、被害者の加害者化やさらなる被害などの連鎖を防ぎ、DV・虐待・貧困の根絶を目指しています。

支援内容

居住支援法人としての活動

神奈川県が指定する住宅確保要配慮者居住支援法人である同団体。DV被害者など、該当者の居住先確保のためのサポートや「緊急連絡先」としての役割、入居前後の相談支援など、さまざまな支援活動を実施しています。
シェルターに避難したDV被害者が、新たな一歩を踏み出したあとの支援にも力を注いでいる同団体。行政、福祉、医療機関と提携しながら、一人ひとりに応じた自立の道をサポートしています。一人暮らしやグループホームなど、さまざまな場所でその人らしく生きていけるようきめ細やかな支援を行っています。

シェルター支援

現状、日本の公的シェルターは、精神的、経済的、性的DVなど、目に見えないDVより、身体的暴力の被害者を優先的に受け入れる傾向が高いだけでなく、ペットや年の大きな男の子と一緒に避難したい方や携帯電話を預けられない方が避難するには難しい状況があります。同団体は、このような行政などから手を差し伸べてもらえなかった方を中心に、シェルター避難・受け入れから自立までのサポートを行っています。
特に、コロナ禍～コロナ後にかけて相談が急増しており、北海道から沖縄まで地域を問わず、避難希望が届いているようです。

啓発支援

「エンパワメント講座」

虐待を受けた子どもは、暴力容認の思考に陥りがちです。そこで同団体は、子どもたちがDV・虐待の加害者にも被害者にもならず、対等な人間関係を築ける大人へ育つためのエンパワメント講座を実施しています。講座では、暴力の禁止(暴力はなぜダメなのか？)や対等な人間関係の構築、自由と責任など、多様なテーマを通して倫理観と自己肯定感を育みます。30名程度の参加者によるラボ形式で、意見の主張と尊重の大切さも学び、子どもたちの価値観を広げる場となっています。

「こころのケア講座」

NPO法人レジリエンスと連携して実施しているこころのケア講座は、DV・虐待を受けた女性が心を癒やし、トラウマから脱却するために年12回行っています。人との境界線や、より良いコミュニケーション方法、家族や自尊心などについて考え学ぶ講座となります。

「同団体主催セミナー」

食品配布会と同時開催で、利用者へ向けたセミナーを毎月1回実施。DV・虐待を経験した親子の関係の築き方や、共同親権について、母子世帯が使える横浜市の制度についてなど、毎回各分野のさまざまなゲストを招き、日々の生活や将来に役立つ内容のセミナーを日本全国に届けています。

「外部機関への研修提供や登壇」

県内外の行政機関や、教育機関、企業などへ向けて、DV・虐待・貧困パワハラ被害防止のための啓発活動を行っています。

登壇テーマ：DV被害の現状と課題、大人のデートDV、ハラスメントの特徴と対策、子どもの貧困について、共同親権について
登壇実績：千葉県／熊本県／新宿区／横浜市青少年育成センター／相模原市男女共同参画センター／獨協大学／青山学院大学

相談

同団体は、DV・虐待や家庭に関する悩みの相談に応じています。また、救済支援や面会交流支援、カウンセリングなどで問題の解決を目指しています。
専任の心理士もおり、一人ひとりのご事情に合わせて丁寧に対応しております。

居場所・学習支援

DV・虐待から避難後に母親が精神疾患となり、子どもの学習・養育環境が整えられない家庭も珍しくありません。また、母親が健康な場合でも、家計を支えるために外で働く時間が長くなり、子どもの学習面までフォローできないケースも多い現状。貧困世帯の子どもの多くは、塾に行く余裕もなく自力で勉強しなければなりません。同団体では、経済的・環境的事情により子どもたちの学力格差がひらくことを防止するため、DV・虐待避難世帯の子どもたちの居場所・学習支援を提供しています。教員免許を保有したスタッフや、塾講師経験者、TOEICなどの資格を保有しているスタッフが中心となって、子どもたちの学習を受験までサポートしており、学業のみならず、スタッフやこども同士の交流の場にもなっています。

また、避難中に学校に行くことが出来ず、出席率に影響が出てしまう子どもや、DV・虐待の影響で人が怖くなり学校に行けない子どもに対しても、近隣の学校と連携して出席扱いになるように対応しています。

イベント・課外学習

同団体は、夏祭りやクリスマス会などの季節のイベントを開催しています。また、自然遺産や歴史的名所をめぐる研修旅行も実施。「安心安全で、多様性に溢れるイベント」をテーマに、子どもたちが新しい価値観や視野を学べる機会を提供しています。長年虐待を受けた子どもがその影響から逃れるには、育った環境から離れ、暴力を振るった親や、その家庭とは異なる価値観や文化、視点などを学んでもらうことが大切であると考えているためです。

遠隔メタバース支援

DV被害を受けた子どもたちの中には、対人関係に恐怖心を抱いたり、避難先が遠方になり孤立してしまったりするなどの事情で、支援の場所に来られない子も存在します。そのような子どもたちのために、同団体はメタバースを活用した学習支援に取り組んでいます。アバターを通して仮想空間で交流することで、距離や場所に関係なくコミュニケーションをとることが可能になり、居場所に来れない子でも、交流や学習の機会を持つことができる。

利用者の声

実際に利用された方の声を一部抜粋してご紹介します。
「知人の紹介できました。最後は実家に戻ったので、長くは滞在しませんでしたが、夜遅くまで相談にのってくれたり、弁護士先生を紹介してくださり、とても有り難かったです。今でも色々相談にのってもらっていて、とても心強いです。温かい場所で、第二のお家みたいな感じです。」（30代女性）

詳細情報

特定非営利活動法人 DV対策センター

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