はじめに

「必要なときに必要な医療を頼れる」環境は、当たり前のことではありません。ネパールを含む途上国では、健康に問題があるときや妊娠したときなどにも、すぐに質の高い医療にかかれないことはよくあります。
NPO法人ASHAは医療資源が乏しい地域でも必要な医療にアクセスできる環境を目指し、現地で自走できる医療の仕組みづくりに取り組んでいます。

本コラムでは、同団体の活動内容についてお伝えします。

概要

医療へのアクセスの課題は、医療機関の不足、医療資源の慢性的な不足、医療者の頻繁な交代や記録不足による治療の分断などに加え、住民側の知識不足など、多様な構造的課題により起こっています。
NPO法人ASHAは、このような課題に対し、コミュニティとテクノロジーの力を使って現地の人々が自ら維持できる仕組みを作ることで解決を目指しています。
この活動は、団体名ASHAの由来「Affordable and Sustainable Healthcare Access（誰もが手の届く、持続可能な医療アクセス）」でもあります。また、同団体はあえてプロボノメンバーが主体となって運営することで、メンバーの多様な専門性を掛け合わせた新しい解決策も目指しています。

支援内容／活動内容

ネパールの農村における医療を頼れる仕組みづくり

NPO法人ASHAでは、医療資源が不足する地域でも必要な医療にアクセスできる環境を目指し、「コミュニティの力」と「テクノロジー」を活用した地方向け医療提供システムづくりに取り組んでいます。

地域保健スタッフの育成

医療機関を簡単に受診できない地域で、コミュニティ内から保健スタッフを雇用し、地域の妊婦・子ども・生活習慣病患者を定期的に訪問して、健康状態の確認や健康指導、受診支援を行っています。独自開発したスマホ用問診アプリ「ASHAConnect」により、医療知識が豊富でないスタッフでも適切な指導やリスクの発見が可能です。

医療情報の適切な管理

元々は紙カルテを患者に渡す文化でしたが、診療・治療履歴をデータ化して保管する電子カルテ「Nepal EHR」を医療機関に導入し、診察の情報が適切に管理・活用される環境を整備しています。これにより、医療の質が向上するだけでなく、医療スタッフの業務負荷の軽減にもつながっています。

共通データベースの作成

「ASHAConnect」と「Nepal EHR」のデータを統合し、可視化するソフトウェアの開発を進めています。共通データベースで一元化されたデータを分析することで、地域に最適な医療提供体制の構築を目指しています。

ヘルスリテラシー向上のための健康教育

農村部において、中学生を対象に、基礎的な健康知識や応急手当に関する教育を行っています。住民自身が家庭医学や応急手当などの健康に関する知識や技術を身につけることで、ヘルスリテラシーの向上を目指しています。

新生児蘇生法研修の普及

ネパールでは、赤ちゃんの約10％は呼吸をしていない「新生児仮死」の状態で生まれますが、適切な技術があれば90％以上の確率で救命できるとされています。そのために必要なのが、生まれたばかりの赤ちゃんを1秒でも早く正常な呼吸に導く「新生児蘇生法」です。
しかし、ネパールではその方法が統一されていないうえに、研修や教育の機会が不足しており、この技術を適切に実践できる医療従事者が限られています。
そこで、同団体ではネパール小児科学会（NEPAS）や日本の専門家と協力し、ネパールにおける標準的な治療を確立するとともに、シミュレーション基盤型教育や指導者育成を通じて現場で実践できる医療技術の習得をサポートしています。

詳細情報

NPO法人ASHA