フリーターが損しない年収は、扶養や社会保険加入の有無によって変わる
フリーターとして働きながら、「収入を増やしたいけど年収の壁で損をしそう」と不安に感じる方もいるでしょう。フリーターが損をしない年収は、社会保険への加入状況や扶養の有無によって異なります。損をしないためには、106万円・130万円・160万円といった「年収の壁」を理解することが重要です。
このコラムでは、税制改正を踏まえた損しない年収の目安や、扶養内・扶養外それぞれの仕組みを分かりやすく解説しているので、ぜひご覧ください。
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この記事にコメントしたアドバイザー
杉浦 詔子
国家資格キャリアコンサルタント / CFP®資格
坪 義生
社会保険労務士/月刊人事マネジメント取材記者
フリーターが損をしない年収は?
フリーターが損をしない年収は、社会保険(企業の健康保険・厚生年金)に加入しているかどうかによって変わります。それぞれの状況に合わせて、フリーターが損しない年収を紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
フリーターが損をしない年収はいくら?~令和7年度税制改正を踏まえて~
フリーターが「損をしない」年収を判断する鍵は、税金と社会保険料が交差する複数の壁をどう乗り越えるかにあるでしょう。
まず、税金の壁です。「令和8年度税制改正の大綱の概要」によると、2026年1月から所得税の課税開始点が103万円から178万円へ引き上げられました。給与所得控除と基礎控除を合わせれば年収178万円までは所得税ゼロとなります。一方で、住民税課税が始まるのは年収110万円前後です。
次に、社会保険料の壁です。週20時間以上かつ従業員51人超の企業に勤める場合は、年収106万円超で社会保険(厚生年金・健康保険)に加入義務が生じます(※2026年10月廃止予定)。この条件に該当しない方でも、原則年収130万円を超えた場合、扶養から外れて自ら社会保険料を負担しなければいけません。
まとめると、働くうえで重視する項目によって、「損をしない年収」は以下のように考えられるでしょう。
1.手取り重視なら106万円未満
2.社会保険の扶養内でいたいなら130万円未満(親の税負担を軽くしたい場合は123万未満)
3.保障と将来年金を重視するなら160万円以上
勤労学生控除などの特例も考慮し、自身の条件と将来の保障を見据えて判断することが「損をしない」第一歩といえます。
参照元:国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」
社会保険の扶養に入っている場合
社会保険の扶養に入っている場合、フリーターとして手取りが減らないようにする年収の目安は、勤務先の条件によって「106万円未満」または「130万円未満」となります。厚生労働省の「『年収の壁』への対応」にもあるとおり、従業員51人以上の企業で週20時間以上働くなどの条件を満たす場合は年収約106万円、そうでない場合でも扶養に入っている方が年収130万円を超えると社会保険の加入義務が発生し、毎月の給与から健康保険や厚生年金の保険料が引かれるため、手取り額が減ることがあります。社会保険の扶養に入っている方は、自分の勤務先が「106万円の壁」の対象かどうかを確認し、扶養から外れる対象にならないよう、年収を調整する必要があるでしょう。
なお、親の税法上の扶養にも入っている場合、自分が19〜22歳であれば年収を「150万円以下」に収めることで親の税負担を増やさずに済みますが、それ以外の年齢の場合は年収を123万円未満に抑える必要があります。社会保険の扶養と税法上の扶養の判断基準は異なるので注意が必要です。
社会保険の扶養に入っていない場合
扶養から外れているフリーターの場合、160万円以上が損しない年収の目安とされているようです。年収が106万円または130万円を超えると社会保険に加入する必要があるため、給与から保険料が差し引かれます。場合によっては、手取り額が年収120万円程度のときよりも少なくなる可能性があるようです。
手取りの減少分をカバーし、かつ自身の所得税がかからない安全なラインが「160万円」となります。
また、配偶者がいる方は税金の控除について注意が必要です。国税庁の「No.1195 配偶者特別控除」によると、配偶者特別控除とは、配偶者に基礎控除額を超える所得がある際、金額に応じて一定の金額の所得控除が受けられる制度のこと。2026年現在では、「配偶者特別控除」が満額で受けられるのは年収160万円未満とされています。年収160万円を超えると配偶者が控除を受けられなくなり、税金が増える可能性があるので注意しましょう。
社会保険の加入条件
社会保険(企業の健康保険・厚生年金)の加入条件には、大前提となる基本ルールと、短時間労働者向けのルールがあります。
【1】基本的な加入条件(4分の3基準)
正社員の4分の3以上の労働時間・日数(目安として週30時間以上)働いている場合は、給与額や企業の規模に関わらず、社会保険の加入対象となります。
【2】短時間労働者の加入条件
上記の「4分の3基準」を満たさない場合でも、以下の条件をすべて満たす従業員は社会保険に加入する必要があります。
・従業員51人以上の企業に勤めている
・週の勤務時間が20時間以上
・給与が月額8万8,000円以上
・2ヶ月を超えて働く予定がある
・学生ではない
※ただし、2027年10月以降から社会保険加入の条件が変更になるため、詳しくは厚生労働省の「社会保険加入の要件」をご確認ください。
フリーターの社会保険については、以下のコラムで詳しく解説しているので、あわせてチェックしてみてください。
社会保険加入を検討中の場合
社会保険加入を検討中の場合も、160万円以上が損しない年収の目安になるでしょう。先述したように、社会保険に加入するとその分の保険料が給与から差し引かれるため、手取り額が年収120万円台のときよりも少なくなる場合があります。
「国税庁」「総務省」「協会けんぽ|全国健康保険協会」「日本年金機構」「厚生労働省」の資料をもとに、年収130万円付近の年収額・手取り額をシミュレーションしてみました。なお、年収130万円未満の方は社会保険の扶養に入っているものとし、年収130万円以上の方は勤め先の社会保険に入っているものとします。また、首相官邸ホームページ「いわゆる『年収の壁』対策」にあるとおり、年収178万円までは所得税が0円となるため、以下にかかる税金は住民税のみの概算です。
以下の表はあくまで一例であり、すべての方に当てはまるわけではありませんので参考程度にご覧ください。
| 年収 | かかる税金
(所得税・住民税) | 社会保険料
(健康保険・厚生年金保険・雇用保険) | 手取り額 |
|---|
| 120万円 | 1万3,900円 | 6,000円
※雇用保険料のみ | 116万7,600円 |
| 129万円 | 2万2,800円 | 6,450円
※雇用保険料のみ | 124万8,250円 |
| 130万円 | 5,200円 | 19万2,290円
※社会保険料約18万5,790円
※雇用保険料6,500円 | 109万10円 |
| 140万円 | 1万3,800円 | 20万6,307円
※社会保険料約19万9,307円
※雇用保険料7,000円 | 116万7,393円 |
| 150万円 | 2万2,500円 | 21万9,684円
※社会保険料約21万2,184円
※雇用保険料7,500円 | 124万5,316円 |
| 160万円 | 3万1,000円 | 23万4,326円
※社会保険料約22万6,326円
※雇用保険料8,000円 | 132万2,174円 |
参照:国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」、総務省「地方税制度|個人住民税」、協会けんぽ|全国健康保険協会「トップページ」、日本年金機構「○令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和6年度版)」、厚生労働省「令和8年度の雇用保険料率について」
※2026年度の税制改正により、会社員・パートの所得税が非課税となるボーダーラインは年収178万円以下(令和7年分以後の所得税について適⽤)となっているため、所得税は0円として計算しています。
※上記の住民税は住宅ローンや生命保険料、ふるさと納税の控除や調整控除を含んでいないため、実際の金額はもう少し低くなる可能性があります。
※健康保険・厚生年金保険の保険料は東京のものを参考に計算しています。
※原則、19歳〜23歳未満の場合は年収150万円まで親の扶養内で働けるため社会保険料は掛かりません。
上記の表を見ると、年収が129万円と150万円の手取り額はほとんど同じだと分かります。これは社会保険料の支払いが発生することにより、年収は上がっているのに手取り額が減るという「逆転現象」が起こっているためです。
「社会保険に加入したいけど手取りを減らしたくない」と感じる方は、手取り額を回復させるために年収160万円を超えて働くことも視野に入れてみると良いでしょう。
フリーターは保険料や税金の支払いがきつい?
フリーターの方が支払うことになる保険料や税金は、社会保険に加入するかによって違いがあります。具体的には以下のとおりです。
・所得税
・住民税(地方税)
・社会保険料(健康保険・厚生年金保険)
・国民健康保険
・雇用保険
社会保険料は社会保険の加入者のみ、国民健康保険料は国民保険に加入している方のみです。税金や社会保険料などが引かれたあとの「手取り額」は、一般的に額面給与の約75〜85%といわれています。
年収によってそれぞれの金額は増減しますが、場合によっては「保険料や税金が高くて手取り額が少ない...」と感じる方もいるでしょう。その場合は、150万円以上を稼ぐと手取り額が徐々に上昇する傾向にあるため、保険料や税金の支払いがきついと感じる方は目安にするのもおすすめです。
フリーターが支払う税金額や、「きつい」おt感じる場合の対処法などについては、以下のコラムで詳しくまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
参照元:国税庁「タックスアンサー(よくある税の質問)」
参照元:厚生労働省「従業員のみなさま」
参照元:厚生労働省「トップページ」
参照元:総務省「地方税制度|やさしい地方税」
参照元:協会けんぽ|全国健康保険協会「トップページ」
参照元:日本年金機構「保険料額表(令和2年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)」
参照元:首相官邸ホームページ「トップページ」
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年収の壁一覧
フリーターが意識したい主な年収の壁は、以下のとおりです。
| 年収の壁 | 年収の壁の別称 | 主な影響内容 |
|---|
| 110万円の壁 | 住民税の壁 | 住民税の課税対象になる
※自治体により異なるので要確認 |
106万円の壁
※2026年10月に撤廃予定 | 社会保険の壁
※企業規模あり | 年収106万円を超え、その他の条件を満たすと社会保険への加入が必要になる |
123万円の壁
※2025年から | 扶養控除の壁
(親の税負担) | 親の税法上の扶養から外れ、親の税負担が増える |
| 130万円の壁 | 社会保険の扶養の壁 | 扶養から外れ、自分で社会保険料を支払う必要がある |
| 150万円の壁 | 配偶者特別控除の壁 | 配偶者の控除額が減少し始める |
178万円の壁
※103万の壁から引上げ | 所得税非課税の上限 | 所得税がかからない上限の目安 |
参照:総務省「個人住民税」、国税庁「No.1800 パート収入はいくらまで税金がかからないか」、厚生労働省「社会保険加入の要件」、首相官邸ホームページ「いわゆる『年収の壁」』対策」、日本年金機構「被扶養者になれる人の範囲」、国税庁「No.1195 配偶者特別控除」
それぞれの壁によって影響する制度が異なるため、自分の状況に合わせて意識する年収を考えることが大切です。
年収の壁の詳細については、以下のコラムからご確認ください。
参照元:総務省「やさしい地方税」
参照元:国税庁「トップページ」
参照元:厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト」
参照元:首相官邸ホームページ「トップページ」
参照元:日本年金機構「健康保険制度解説」
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フリーターが年収を増やす方法
フリーターが損をせずに収入を増やす際は、単に働く時間を増やすだけでなく、効率的に年収を上げる工夫も必要といえます。年収の壁を意識しつつ、スキルアップや働き方の見直しをすることによって、手取りを減らさずに収入を伸ばすことが可能です。
ここでは、フリーターが無理なく年収を増やすための具体的な方法を紹介します。
フリーターが年収を増やすためのおすすめの方法を教えてください
年収を増やすには「スキルを身につける方法」と「働き方を工夫する方法」がおすすめです
フリーターの方が年収を増やすためには、スキルを身につけて年収を上げる方法と、働く時間を工夫して年収を上げる方法がおすすめです。
職場では、語学やパソコン、コミュニケーション能力など多様なスキルが必要とされます。仕事に必要なスキルを身につけることで、時給の高い仕事にも応募しやすくなるのでおすすめです。未経験から学べる講座や資格も多数あります。働きながらでも、少しずつスキルを身につけていき、レベルアップにより時給もアップさせることは、おすすめの方法です。
また、今の働き方を少し工夫することで年収を増やすことも可能です。たとえば、家から近い職場を選び、通勤にかかる時間を短くし、そのぶん働く時間を増やすこと。給与の支給対象とならない休憩時間などが短い仕事を選ぶこと。深夜や早朝、休日など、同じ仕事でも平日の昼間の時間帯よりも時給の高い時間帯に働くこと。
このようにフリーターが働き方の工夫をすることは、年収を増やすおすすめの方法です。
手当がつく資格やスキルを身につける
資格やスキルを身につけることで、時給アップや手当の支給につながる可能性があります。たとえば、介護職における「初任者研修」などの介護資格や、ドラッグストア等で役立つ「登録販売者」といった資格は、手当の対象になりやすいでしょう。
資格手当がある職場では、対象となる資格を持っているだけで手当が上乗せされるため、労働時間を増やさずに収入アップを狙えます。また、資格取得やスキルを身につけることで仕事の選択肢が広がり、より好条件の職場に転職できる可能性も。年収アップと将来のキャリアを見据え、自分に合った資格取得やスキルの習得を検討してみましょう。
仕事を掛け持ち(Wワーク)する
収入を増やす方法として、仕事を掛け持ちするのも一つの手段です。メインのアルバイトに加えて短時間の仕事を取り入れることで、効率的に収入を上げられます。
ただし、勤務時間が増えることで体力的な負担が大きくなる点には注意が必要です。また、収入が増えることで年収の壁を超え、税金や社会保険料の負担が発生する場合もあります。
事前に年収の見込みを確認し、無理のない範囲で働くことが大切です。
フリーターが損をせず安定して生活できる年収の目安は年収180万円以上、安定して暮らすには手取り200万円以上が目安です
フリーターが損をしない年収として、社会保険料を負担し、所得税と住民税を納めても手取りが増えていく「年収180万円以上」がひとつの目安となります。社会保険料が控除される年収130万円、所得税が発生する年収160万円を超えて、手取り年収が増える目安は年収180万円以上であるためです。
ただし、年収180万円あっても安定した生活ができないこともあります。
総務省の「家計調査報告-2024年(令和6年)12月分及び2024年平均-」をみると、2024年の単身者の生活費は平均で約17万円であり、1年間に約204万円が生活費として必要となる計算です。これは平均値で、一人ひとりの生活費は異なりますが、安定した暮らしを目指すなら、手取りで200万円以上を目指すことになるでしょう。
なお、支出が多く赤字家計では安定した暮らしはできません。収入だけでなく支出も見直す必要性もあります。
参照元:総務省統計局「家計調査 2024年(令和6年)平均 (2025年2月7日公表)」
正社員になる
収入を増やしつつ安定して稼ぎたい場合は、正社員になるのも有効な選択肢です。正社員は賞与や各種手当の対象になることが多く、フリーターよりも年収が上がりやすい傾向にあります。
| 年齢 | 賃金
(正社員) | 賃金
(フリーター) |
|---|
| 20~24歳 | 22万8,700円 | 19万4,800円 |
| 25~29歳 | 26万3,600円 | 21万6,400円 |
| 30~34歳 | 29万4,100円 | 22万1,400円 |
| 35~39歳 | 32万7,000円 | 22万500円 |
| 40~44歳 | 35万4,600円 | 22万600円 |
| 全年齢 | 33万6,300円 | 22万6,600円 |
参照:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査の概況(6) 雇用形態別にみた賃金第6-1表 雇用形態、性、年齢階級別賃金、対前年増減率及び雇用形態間賃金格差(p.12)」
また、フリーター(アルバイト)とは異なり、シフトの増減による収入の波がなく、雇用も安定しているため、将来的な安心感も得られるでしょう。最初から高収入を目指すのが難しい場合でも、経験を積むことで昇給やキャリアアップが期待できます。長期的に安定した収入を得たい方は、正社員就職を視野に入れるのがおすすめです。
フリーターの年収事情については、以下のコラムで詳しく解説しています。気になる方はぜひご一読ください。
参照元:ハタラクティブ「若者しごと白書2024」
参照元:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
フリーターが就職を成功させるには?
フリーターから正社員を目指す場合、事前の準備が成功を左右します。たとえば、自己分析で強みや適性を整理したり、企業や業界の研究を行ったりすることで、自分に合った職場を見つけやすくなるでしょう。
そのうえで志望動機を作成すれば、企業を選んだ理由に説得力をもたせられ、採用担当者にも熱意が伝わりやすくなるはずです。こうした準備を一つずつ丁寧に進めることで、就職活動の方向性が明確になり、自分に合う仕事への就職を成功させられる可能性を高められます。
一人での就職活動に不安がある場合は、ハローワークや求人サイトの活用に加え、就職・転職エージェントを利用するのも有効です。サポートを受けながら進めることで、就職活動をスムーズに進められるでしょう。
まとめ
フリーターが損をしないためには、税金や社会保険に関わる「年収の壁」を理解することが大切です。特に社会保険の壁である106万円や130万円、所得税非課税の上限である178万円の壁は手取りに大きく影響します。扶養内で働くか、あえて壁を超えて収入を伸ばすかを、自分の状況に合わせて判断しましょう。
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