【ポスドク問題】有能な研究員が抱える社会的不安とは?

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この記事のまとめ

  • ポスドクとは、博士課程を修了したのち任期期限付きの研究員として勤務している人
  • ポスドクの多くは非正規雇用のため、生活に関して不安がある
  • 若いうちだと転職先が見つかりやすいので、動くならば早いほうが良い

ポスドク問題とは、博士号を取得したのち、任期付きで研究活動をする研究員が直面している雇用形態や就職難を指します。雇用形態や給料面で不安を抱えている人も多く、ポスドク問題に対し、国が制作を打ち出しました。このコラムでは、ポスドクに関する問題点や、国の政策、主な転職先などを紹介しています。主な転職先としてはITや製薬会社などが多いようです。ポスドクとしての経験を活かせる就職先を見つけましょう。

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ポスドクって何?

ポスドク(Postdoctoral Researcher, Postdoctoral Fellow)の正式名称は、ポストドクターです。博士号を取得したのち、大学や研究機関において任期付きで研究活動をする非正規雇用スタッフを指します。最高学府において勉学に励み博士号を得ていることから、本来は豊富な知識と探究心をもって、これからの日本や世界を牽引すべき人物です。
しかし、ポスドクの独特な雇用形態に不安を抱えながら働く方も増えています。非正規雇用や給料面が問題視され、国が政策を打ち出したのが「ポスドク問題」です。
博士取得者の就活に関してあわせて読みたいコラムは「博士号の就職は厳しい?主な勤め先や就活を成功させる方法を紹介」です。博士課程修了者の就職が厳しい理由や主な就職先を紹介していますので、ぜひご一読ください。

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ポスドク問題とは?

ポスドク問題とは、不安定な雇用形態や給与面、キャリアパスなど、ポスドクが抱えるさまざまな問題です。大学院の博士課程まで修了した有能な人物が、知識や技術を充分に発揮できる環境が整っていないため、日本の発展に大きな損害を与える可能性があります。この項では、ポスドクが抱える問題をまとめました。

非常勤勤務

ポスドクは、さまざまな大学や研究所で任期期限付きの雇用が一般的です。平均雇用期間は1年が最も多く、任期制という非常に不安定な立場に置かれています。

ポスドクの雇用期間縦軸
1年46.6%
雇用なし22.8%
1年以上2年未満3.2%
3年以上4年未満4.1%
10年以上0.3%

引用:文部科学省「ポストドクターの正規職への移行に関する研究

任期満了後の再任用もありますが、大半は「任期満了につき雇い止め」のケースが多い傾向です。再任用されるためには、雇用期間中に一定の成果を上げることが求められます。次年度の新たな任用先が決まっていなければ、無職となり収入も途絶えてしまいます。

参照元
文部科学省
ポストドクターの正規職への移行に関する研究

年齢(人数)常勤割合非常勤割合分からない
29歳以下(195名)42.6%40.0%17.4%
30~34歳(556名)48.6%43.2%8.3%
35~39歳(215名)53.5%39.1%7.4%
40歳以上(69名)44.9%52.2%2.9%

引用:文部科学省「ポストドクター等の研究活動及び生活実態に関する分析

任期終了前にポスドクの仕事と並行して次の任用先を探さなければならず、仮に次の任用先が決まっていても、綱渡り状態な生活のため結婚や妊娠を躊躇する人が多くいるようです。常勤と非常勤の割合も年齢による大きな差はなく、不安定な非常勤雇用が約半数に上ります。

参照元
文部科学省
ポストドクター等の研究活動及び生活実態に関する分析

キャリアパス整備の不備

日本では博士号を取得したのちのキャリアパスが確立しておらず、ポスドク後の就職先が見つからないことも問題視されています。欧米では、ポスドクの期間を常勤職員になる前のトレーニング期間とみなしています。博士課程を修了した後、数か所の大学や研究施設で経験を積み、正規雇用されるキャリアパス(ロールモデル)が確立されています。日本では、正規職への移行率が中卒や高卒と比べて圧倒的に低く、就職先を見つけることの大変さが伺えるでしょう。

【学歴別、正規職への移行率】

 男性女性
中・高卒28.1%5.5%
高専・短大卒22.6%4.9%
大卒以上21.7%8.3%
博士卒(ポストドクター)7.0%4.4%

引用:文部科学省「ポストドクターの正規職への移行に関する研究

博士課程に進んだ後の進路については、「博士課程に進むと就職は難しい?メリット・デメリットや仕事の例を解説」のコラムでご紹介しています。就職せずに博士課程に進むメリットも紹介していますのでぜひ、ご一読ください。

参照元
文部科学省
ポストドクターの正規職への移行に関する研究

待遇および社会保険について

ポスドクは、雇用期間の見通しが不透明なうえ待遇も良いとは言えず、社会保険に加入していない事例も多いため問題視されています。年齢を重ねても昇給は望めず賞与もないため、一般企業の人たちより給与が少ない場合があるようです。

ポスドク問題による優秀な人材の海外流出

海外ではポスドクのキャリアパスが確立しており、優秀な日本人ポスドクの海外流出が懸念されています。日本と違い、海外ではポスドクの民間企業への就職も多く、博士人材が大学や研究所以外でも活躍できる場が多く用意されています。グローバル化が進み、海外で就職がしやすくなっていることも、ポスドク海外流出の一因です。ポスドク問題に直面している若手研究者も、日本で雇用条件に不安を抱えながら研究に携わるよりも、海外での活躍を選択肢に入れる人が増加しています。日本の深刻なポスドク問題は、優秀な人材の海外流出に繋がっているのです。

ポスドクの給料

ポスドクの給料は一般的な同世代の初任給に比べ低い場合が多く、研究分野によっても大きな差があります。分野別の平均月収は人文社会系が最も低く、無給の場合が多いため平均値が低くなっているのが現状です。平均月収が高い分野は工学系ですが、正規雇用ではない場合が多く賞与がないため、年収としては一般の同年代の年収よりも低い傾向にあります。

分野平均月収
人文社会系21万3,000円
理学系32万9,000円
工学系33万円
農学系28万7,000円
保健学系30万7,000円
その他26万円

引用:文部科学省「ポストドクター等の研究活動及び生活実態に関する分析

理系の方は、「理系の就職先はどんな職種?文系との違いや学部卒と院卒の差を解説」もあわせてご覧ください。

参照元
文部科学省
ポストドクター等の研究活動及び生活実態に関する分析

ポスドクの人数

2018年度のポスドクの延べ人数は約15万人おり、アカデミアのポストや研究機関の雇用できる人数をはるかに上回る人数です。

年度ポスドク延べ人数ポスドク支援計画時(6224人)からの増加率
2004年度1万4,854人239%
2005年度1万5,496人249%
2006年度1万6,394人263%
2007年度1万7,804人286%
2008年度1万7,945人288%
2009年度1万7,116人275%
2012年度1万6,170人260%
2015年度1万5,910人256%
2018年度1万5,590人250%

引用:文部科学省「ポストドクター等の雇用・進路に関する調査(2018年度実績)

ポスドクが増加した理由は1996年度から2000年度の5年間で行われた「ポストドクター1万人支援計画」です。博士号取得者を1万人に増やし日本の科学技術発展を狙う目的で、国が期限付きの雇用資金を大学や研究施設に配布しました。ポストドクター1万人支援計画前には6,224人しか居なかったポスドクが、計画開始とともに急増し、計画の1年目には1万人を優に超えました。ポストドクター1万人支援計画によってポスドクは増えましたが、大学教員の採用数は増加せず、ポストに付けないポスドクが増加し、現在の問題に繋がっていったといえます。

参照元
文部科学省
ポストドクター等の雇用・進路に関する調査(2018年度実績)

ポスドクの高齢化問題

ポスドクの年齢が上昇し、35歳以上のポスドクは「シニアポスドク」と呼ばれ問題視されています。

年齢割合
29歳13.5%
30~34歳35.9%
35~39歳21.8%
40~44歳12.0%
45~49歳7.0%
50歳以上9.8%

引用:文部科学省「ポストドクター等の雇用・進路に関する調査

年齢の割合を見ても30代以上のポスドクが半数を占めており、今後も高齢化が懸念されています。ポスドクのなかには一度就職をし、社会人を経験したのち博士課程を修了した人もいるため、40~50代以上のポスドクも少なくありません。チームや研究機関によっては高収入・高待遇でプロフェッショナルとして研究を進めていても、立場上は「ポスドク」の高齢研究者も多くいます。今後も、大学や公的研究機関の正規雇用のポストが増加する見込みはなく、シニアポスドクの高齢化問題は深刻化していくでしょう。

参照元
文部科学省
ポストドクター等の雇用・進路に関する調査

民間企業や法人への転職

ポスドクとして何らかの研究に携わり、常勤職員を目指したい方は多くいますが、厳しい現状のためポスドクを辞め転職する人もいます。ポスドク後の就職先と特徴を紹介しますので、転職をお考えの方は参考にしてください。

博士の学位を持つ方には、「学士とは?修士や博士との違いと就活に与える影響を解説」のコラムがおすすめです。博士や修士など、学位が就職に与える影響などをまとめているので、ぜひご一読ください。

私立大学

国立や公立での教授や准教授、助教授のポストに付けない場合、私立大学などへ転職する人がいます。採用枠が限られているうえ、ポスドクのように任期付きの非常勤として雇用されるケースもあるようです。収入は国立や公立の大学と比べ、数万円低い傾向にあります。

化粧品・食品・薬品・その他の製造業

ポスドク後の一般企業への転職は、化粧品・食品・薬品・ITなどの分野が多くあります。近年では、ポスドクのような専門的な知識を持っている人のニーズが高まっており、ポスドク問題解決のため国や大学も就職を後押ししています。一般企業や研究機関では海外との合同研究に携わることもあり、英語力が必要な可能性があるため、英語のスキルを磨いておきましょう。

製薬業界

製薬業界では、ポスドクや博士課程修了者の採用ニーズが高まっており、転職先にはおすすめの分野です。近年、医薬品における専門性の高い情報提供やエビデンスの構築などが求められており、医薬品やバイオ系に関わる以下の職種が日本でも注目され始めています。

・メディカルサイエンスリエゾン
・メディカルアフェアーズ
・臨床開発モニター
・ファーマコビジランス

日本で上記の職種は歴史が浅く、一般企業も未経験者の採用を積極的に行っています。製薬業界では、研究の細分化やテクノロジーの進歩などによって、薬学以外の知識に長けている人材のニーズも高まっており、生物学や分析化学の分野の採用を強化しているようです。近年ではバイオベンチャーの数も増え、大手製薬会社と共同開発を行っているベンチャー企業も増えてきました。バイオベンチャーはポスドクや博士号を取得している研究者やテクニシャンの採用に意欲的です。

卓越研究員制度

国もポスドクの就職を後押ししており、2016年から文部科学省が「卓越研究員制度」を導入しました。文部科学省や日本学術振興会が一般企業や研究機関からの求人をとりまとめ、卓越研究員の募集として公募を行っています。簡単にいうと、国が優秀な研究員を選び、企業や研究機関とのマッチングをしてくれるということです。ポスドクを採用した企業・研究機関は、任期のないポストを用意するか、任期付きの場合は次に任期なしのポストに付く条件を明示しなければなりません。いずれの場合も、若手研究員の安定した雇用に繋がると期待されています。

転職するなら30代前半がおすすめ

35歳を超えると、大学の教授や助手としてアカデミアで正規雇用される可能性が低くなるため、転職するなら30代前半がおすすめです。一般の企業に転職する場合も同様に、年齢が上がるにつれて転職が難しくなります。実際に博士号を取得しポスドクとして研究を続けた結果、気づけば30代後半になり、アカデミアのポストも民間企業への転職も難しくなり、追い打ちをかけるように雇止めにあったケースは少なくありません。ポスドクになったら早い段階から今後のキャリアを考え、民間企業へ転職するなら30代前半に転職活動を始めましょう。
大学院卒で履歴書の書き方に苦戦している方には、「大学院卒の履歴書の書き方を解説!学歴欄の記載方法や作成のポイントとは」のコラムがおすすめです。大学院卒と大学卒で履歴書の書き方は異なるため、しっかりとポイントを押さえましょう。

ポスドクとしての立場に不安を感じている方、民間への就職を考えているが就活の仕方が分からない方は、就職エージェントの「ハタラクティブ」をご利用ください。求職情報の提供、履歴書の書き方指導、面接マナーのアドバイス、自己アピールの方法など、きめ細やかにサポートいたします。正規雇用への道のりを一緒に歩みましょう。まずはお気軽にご相談ください。

ポスドク問題に関するFAQ

ポスドクとして勤務している人のなかには、今後のキャリアパスに不安を感じている人もいるようです。ポスドク問題に関するお悩みや質問にQ&A方式でお答えします。

ポスドク問題とは何ですか?

ポスドク問題は、博士号を取得した研究者が任期付きの非常に不安定な身分で雇用されていることです。任期終了後雇止めの可能性も高く、ポスドクとして勤務しながら新たな就職先探しを行わなくてはならず、国も卓越研究員制度などの政策を打ち出しています。

卓越研究員制度とはなんですか?

2016年に文部科学省が開始した制度で、研究者を雇用したい企業や研究機関とポスドクのマッチングを仲介する制度です。採用側は任期なしのポストを用意するか、任期終了後に次の任期なしのポストに付くための条件を明示しなければならず、ポスドクの雇用安定に期待ができます。

ポスドクが転職するならどのような分野が有利ですか?

ポスドクの転職先としては製薬、IT分野が注目されています。ポスドクを対象にした一般企業や研究機関からの募集も増えているため、求人サイトに登録し自身のキャリアパスを早い段階から考えましょう。転職エージェントのハタラクティブでは、プロのキャリアアドバイザーが、あなたに寄り添った転職支援を実施します。サービスはすべて無料ですので、一般企業への転職に不安や悩みがある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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