農学部は、卒業者の約65%が就職し、約28%は大学院に進学している(令和6年度)
農学部出身者の就職先には、どのような職業があるのか気になる人もいるでしょう。農学部出身者の主な進路は、「実家の農家を継ぐ」「企業へ就職する」「大学院へ進学する」の3つです。
このコラムでは、農学部出身者が活躍できる職業をピックアップして紹介します。就職先の方向性が定まっていない方は、職業や役立つ資格、就活のポイントもぜひ参考にしてみてください。
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農学部は就職に有利?
農学部の卒業者は、約65%が就職し、約28%が大学院などへ進学しています。文部科学省の「大学教育の現状について」(令和7年12月)に掲載された令和6年度の学校基本統計では、農学部の卒業者17,854人のうち、進学者は4,933人、就職者は11,625人でした。この数値は、大学院へ進む人や、就職を希望しなかった人も含めた卒業者全体を分母にした割合です。就職を希望した人のうち実際に就職できた人の割合(「就職率」)とは、分母が異なります。就職希望者を分母にした就職率は、大学全体で98.0%です(令和8年4月1日現在)。
関係学科別の進学者と就職者の割合を、下記の表にまとめました。
| 関係学科(令和6年度) | 進学者の割合 | 就職者の割合 |
|---|
| 人文科学 | 4% | 82% |
| 社会科学 | 3% | 86% |
| 理学 | 46% | 47% |
| 工学 | 40% | 55% |
| 農学 | 28% | 65% |
参照:文部科学省の「大学教育の現状について(p.5)」
農学部の就職者は、卒業者の約65%を占めます。残りの約35%のうち、約28%は大学院などへの進学者で、そのほかの約7%は、一時的な仕事に就いた人や進路が未定の人などです。理学や工学と同じように、大学院に進む人が一定数いるため、就職者の割合が人文科学・社会科学より低めになっています。なお、この「就職者」には、契約期間が1年以上でフルタイム相当の有期雇用の人や自営業主も含まれ、アルバイトなどの一時的な仕事は含まれません。
就職者の割合が低めなのは大学院進学が多いためで、このデータだけで「就職に不利」と判断するのは難しいでしょう。
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農学部出身者の主な進路
農学部出身者の主な進路は、以下のとおりです。
実家の農家を継ぐ
実家が農家の場合、後継ぎを理由に農学部へ進学する人もいます。そのため、大学卒業後は、就職活動を行わずにそのまま家業を継ぐ人も少なくありません。幼少期から家業を手伝っていた人も、大学で学んだ知識を活かして活躍できるでしょう。
大学院へ進学する
「農学部での学びをより深く研究したい」という思いから、大学院への進学を希望する人もいます。農学系の大学院は、農学研究科や連合農学研究科、生命科学研究科などさまざまで、研究テーマも大学院によって異なるのが特徴です。情報収集や研究室訪問を行い、自分の研究したい内容を明確にしておきましょう。
企業に就職する
食品や製薬、化粧品、種苗、農薬といった農学と関わりの深い業界のほか、営業職や品質管理職など、学部を問わず応募できる職種もあります。農学は、作物・動物・食品・環境・経済などの分野を含むため、応募できる職種の幅が広いことが特徴です。希望する業界が決まっていない場合は、学んだ分野と仕事内容の共通点から、候補を広げて考えてみましょう。
新卒で就職を希望する場合は、在学中から就活を行います。就活にかかる時間や準備について詳しく知りたい方は、以下のコラムをご参照ください。
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農学部での学びが活かせる職業
農学部出身者は、農業関係だけでなくさまざまな業界・企業に就職が可能です。「SDGs」が求められる昨今、食や地球環境、健康への意識が高まっています。農学部出身者も専門的な知識を活かし、多様な業界での活躍が期待できるでしょう。
以下では、実際に農学部から目指せる職業を紹介します。
農学部出身者が目指せる一般企業での職業
ここでは、農学部出身者が就職しやすい一般企業を紹介します。農学部出身の場合であっても、一般企業への就職においては、ほかの学部生における就活と変わりません。農学部出身者が目指せる職業は、研究職や品質管理、営業職など、多岐にわたります。ぜひ参考にしてみてください。
食品業界
農学部出身者の代表的な就職先は、食品業界です。農学部では食物について学ぶことが多く、特に加工食品・健康食品・飲料などを扱う食品メーカーでは在学中に得た知識を活かしやすいでしょう。
また、食品製造業は人手不足の傾向にあり、求人の選択肢は多いといえます。ただし、職種によって募集状況は異なるため、希望する職種の求人も確認しましょう。
住宅業界
農学部で農業土木や測量を学んだ方は、住宅業界や不動産業界の仕事も目指せるでしょう。「測量士補」は、試験に合格するか、大学などで測量に関する科目を修めて卒業し、登録を受けることで取得できます。在学中に取得しておくと、就職に有利になる可能性があります。「測量士補」の資格を取得すると、「土地家屋調査士」試験の午前の部が免除されるからです。
建築や土木業界
農学部で土木を学んだ方は、建築や土木系企業の職業に就く道も選択肢の一つです。大規模な建設や土木工事を総合的に手掛けるゼネコンや、設計や施工を専門的に行う建築関係の中小企業が、建築・土木系企業に当たります。
また、建設コンサルティング会社では、農業農村整備を専門としている会社もあります。技術職での就職の場合、専門知識や技術が必要です。しかし、同じ会社でも業務内容が営業や事務の場合は、スキル面はさほど要求されません。
なお、技術職での就職の場合、専門知識や技術が必要です。しかし、同じ会社でも業務内容が営業や事務の場合は、専門知識が必須ではない企業もあるので、事前に情報収集を行いましょう。
製薬業界
農学部でバイオサイエンスや生物を学んだ方なら、就職先として製薬会社も考えられます。製薬会社の研究職では、ハイレベルな専門知識が要求されるでしょう。製薬会社には、薬学部からの就職希望者もいます。
そのため、農学部から製薬業界へ就職を希望する方は、製薬業界で求められる専門知識を確認し、就活に活かせるよう準備しておきましょう。
化粧品業界
製薬会社と同じく、化粧品会社もバイオサイエンスの知識が活かせる業界です。新製品の開発や研究を行う研究職が、主な職種となるでしょう。研究や開発を職業にするのは、狭き門を通過しなければなりません。しかし、学部や学科の指定はないため、農学部からも挑戦できます。
種苗メーカー
種苗メーカーも、農学部出身者が活躍できる職業の一つといえます。種苗メーカーとは、野菜や花の種子を研究し売り出す会社です。研究職の場合、大学院で専門的な研究をしてきた人が採用の中心となる企業もあります。 ほかにも、品種交配で新たな品種を作り出す「育種家」という職業もあります。気になる方はチェックしてみてください。
大規模農家
農学部の方なら、農業に興味を持っている方も少なくないでしょう。農業に携わりたいと考えている方には、大規模農家(ファーム)へ就職する道もあります。農作業のほか、生産過程の管理やお客さまの対応などの業務を行う職業です。
大規模農家(農業法人)の中には、福利厚生や休日制度が整っているところもあります。待遇は法人によって異なるため、求人票で給与や休日を確認し、就職の対象として考えてみる価値があるでしょう。
農薬や肥料のメーカー
農学部で農芸化学を学んだ方は、農薬や肥料のメーカーへの就職を視野に入れるのも良いでしょう。
しかし、肥料や農薬の品種改良や開発をする研究職は、専門知識が必要とされる場合もあります。研究職以外では、農協や園芸店に売り込みをする営業職で活躍する選択肢もあるでしょう。
営業職
営業職は農学部に限らず、どの学部からでも応募できる職業です。営業職では主に、自社の商品を顧客に販売したり、新規の取引先を増やしたりすることが求められます。消費者と直接接することが多いため、コミュニケーション能力を発揮できる仕事です。
製造技術職
製造技術職は、自社製品の開発に携わる仕事です。製造技術職の仕事内容は幅広く、開発する商品によって専門知識や求められるスキルも異なります。開発から商品完成までは、トライアンドエラーの繰り返しです。
そのため、コツコツと我慢強く取り組める人におすすめの職業です。
研究職
研究職には、基礎研究と応用研究があります。大学や大学院で取り組むのは、論文発表を目的とした基礎研究が中心です。一方、企業では、事業化・利益化を目的とした応用研究が主流となっています。ただし、大手企業には、基礎研究と応用研究の両方を行う会社もあるでしょう。
内閣府の「総合科学技術・イノベーション会議」の資料からも分かるように、研究職に就く割合は大学院卒以上が多い傾向にあります。農学部卒から研究職に就きたい方は、大学院への進学も視野に入れておくとよいでしょう。

引用:内閣府「(参考)課程・分野ごとの就職先の割合(令和3年度)(p.39)」
参照元:内閣府「総合科学技術・イノベーション会議(本会議)」
品質管理職
自社商品の品質が求める基準やレベルに達しているかを確認するのが、品質管理職の仕事です。
チェックの対象や仕事内容は、企業によって異なります。成分の分析を行う場合もあれば、製造環境の見直しをする場合も。そのため、自分の得意分野や専門性を活かせる企業やメーカーを選ぶのがおすすめです。
医療情報提供者(MR)
医療情報提供者は、通称MRとも呼ばれています。MRは、病院のドクターに自社製品の情報を届けたり、副作用情報を収集したりする仕事です。製薬業界とも関わりのある職業で、専門的な知識を活かした営業職といえるでしょう。
グリーンコーディネーター
グリーンコーディネーターとは、観葉植物を使用した空間演出を行う職業です。イベント会場やオフィス内など活躍の場は多岐にわたります。
グリーンコーディネーターとしてキャリアアップを目指す人は、技能検定「園芸装飾」(室内園芸装飾作業)に合格しておくと知識や技術をアピールできるのでおすすめです。
農学部出身者が目指せる一般企業以外の職業
一般企業への就職以外でも、農学部出身者が活躍できる職業はあります。以下では、自営農家や公務員、獣医師などの職業についてまとめたので、参考にしてみてください。
自営農家
自営農家とは、自営業としての農家の仕事をする人のことです。自営農家の後継ぎとして仕事を行う場合や、個人で独立して農業を始める場合も、自営農家に該当します。
後継者不足により廃業する農家は増えており、新規で農業を始める人を支援する自治体もあるようです。国の新規就農支援施策には、研修期間中や経営開始直後の生活を支える「就農準備資金」「経営開始資金」(いずれも返済不要の交付金。要件を満たさない場合は返還を求められることがあります)と、施設や機械の整備に使える無利子融資「青年等就農資金」があります。要件や交付額は年度によって変わるため、最新の情報は農林水産省のサイトや各都道府県の新規就農相談窓口でご確認ください。
参照元:農業をはじめる.JP「国の新規就農支援施策」
公務員
農学部出身者は、公務員も目指せます。農林水産省や国土交通省、環境省といった省庁や、地方公務員として活躍できるでしょう。
なかでも、農林水産省では農業支援や農地整備など、大学で学んだことを活かせる職業がそろっています。また、畜産試験場や農業試験場、農業研究センターなどの機関への就職も可能です。教員免許を持っている方は学校の教師という選択肢もあります。
農業協同組合
農学部出身者の職業として、農業協同組合への就職があります。なかでも、農学部出身者が活躍しやすいのは、全国農業協同組合連合会(JA全農)でしょう。農協が担う業務は、農産物や畜産物の加工販売、経営面のバックアップ、畜産市場の運営、直販事業での販売など多岐にわたります。 就活を始める前に、興味のある分野をチェックしておきましょう。
獣医師
農学部には獣医学科があるため、獣医として働く道もあります。獣医の仕事場は、動物病院だけではありません。動物園や水族館、牧場なども獣医が必要な職場です。
そのほか、獣医は保健所や食品会社などでも勤務できるため、職場環境は就職先によって大きく異なるでしょう。
飼育員
農学部で動物生態学を学んだ方は、動物園の飼育員になるのもおすすめです。動物園や水族館で、動物の世話をするほか、園内ガイドや動物ショーなどの業務があります。動物を優先するため、休日や退勤時間が調整しにくい場合もあるかもしれません。
しかし、動物好きの人や動物生態に詳しい人には適した職場といえます。求人の中には、学芸員の資格取得を条件とするものもあるため、事前にチェックしておきましょう。
農学部出身者が目指せる海外の職業
農学部で学んだことを活かせる職業の中には、海外での活躍が期待できるものも多くあります。将来的に海外で働いてみたいと考えている人は、可能性のある職業を選ぶと良いでしょう。
海外に挑戦する場合は、当然ながら英語や中国語などの外国語力が求められます。語学に関する資格を取得するなど、早めに準備を進めましょう。
農協の海外勤務
海外で、農業技術指導や共同開発を担う職業です。海外勤務をするには、農協に就職後、選考を通過する必要があります。
海外研究機関
農学部での研究内容によっては、海外の研究機関に就職しても良いでしょう。また、上述した食品や製薬、化粧品などの一般企業で、外資系企業に就職する道もあります。語学力が身についていれば、農学部から外資系の職業に就くことも可能です。
農学部出身者が希望の職業に就くための3つのポイント
農学に関わる職業に就きたい場合は、農学部に進学を決めた理由を伝えられるようにしておきましょう。一方で、大学の専攻とは関連性のない業界に就職を希望する場合は、志望動機を明確にし、熱意や活かせるスキルをアピールすることが大切です。
以下では、農学部出身者が希望の職業に就くためのポイントを3つ紹介します。
農学部出身者が希望の職業に就くためのポイント
- 就職に役立つ資格を取得する
- 農学部で得た知識やスキルをどのように活かせるか考える
- 就職エージェントに相談する
1.就職に役立つ資格を取得する
資格を取得しておくことで、就活時に知識やスキルをアピールできます。農学部出身者におすすめの資格は以下のとおりです。
- ・大型特殊自動車免許(農耕車限定)
- ・HACCP管理者
- ・食品衛生管理者
- ・家畜人工授精師
- ・管理栄養士、栄養士
- ・測量士補
- ・毒物劇物取扱責任者
・技術士補(農業部門)
資格を取得する際は、就職先の業務に関連性のあるものを優先しましょう。上記の資格以外にも就職に役立つ資格を知りたい方は、以下のコラムをご参照ください。
2.農学部で得た知識やスキルをどのように活かせるか考える
農学部は、生き物や農作物について専門的に学べる学部です。就活を行う際は、農学部で得た知識やスキルを振り返り、仕事に活かせる点を見つけましょう。自分のアピールポイントと採用側が求めるスキルがマッチすれば、採用される可能性が高まります。
就職面接に臨む際は、事前に企業研究や自己分析をしっかりと行いましょう。
3.就職エージェントに相談する
農学部で学べる分野は多岐にわたるため、幅広い知識や技術を習得していることが強みになるでしょう。一方で、「自分の強みが分からない」「強みをうまく伝えられない」とお困りの方は、一度就職エージェントに相談してみるのがおすすめです。
まとめ
農学部の学びは、食品、製薬、化粧品、種苗、建設、公務員、農業、獣医師など、幅広い職業で活かせます。農学は卒業者の約28%が大学院に進む分野(令和6年度)のため、研究職を目指す場合は、進学も含めて計画を立てましょう。資格は、種類によって取得方法や評価が異なるため、志望先の求人票を確認してから選ぶのが効果的です。
農業に興味がある方に限らず、自分の強みを活かせる仕事に就きたい方は、就職エージェントなども活用しながら、進路を絞り込んでいきましょう。
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職業選びについて農学部出身者からよくある質問
ここでは、農学部出身者の職業選びについてよくある質問に答えました。
農学部出身者の就活における強みはなんですか?
幅広い企業にマッチしやすいことです。食や環境、生活に関わる多彩な知識を持っているため、活かせる職業が多いのが農学部の強みといえるでしょう。
さらに、このコラムの「就職に役立つ資格を取得する」でも解説したとおり、資格取得も強みになり得ます。
農学部出身者の就活で注意すべき点はありますか?
農学部出身者は幅広い知識をアピールできる反面、理学部や工学部に比べると専門性がないと捉えられる可能性もあります。このコラムの「農学部で得た知識やスキルをどのように活かせるか考える」でも述べたとおり、就活の際は就職先にマッチするスキルや知識を優先的にアピールすることが大切です。
農学部から公務員になるにはどうすればいいですか?
国家公務員は、人事院が実施する採用試験に合格する必要があります。総合職(大卒程度)には「農業科学・水産」「農業農村工学」「森林・自然環境」などの区分があり、2026年度(2027年4月採用)の受験資格は、1996年4月2日〜2005年4月1日生まれの人、または2005年4月2日以降生まれで大学を卒業した(2027年3月までに卒業見込みの)人などです。地方公務員は自治体ごとに試験が異なるため、年度ごとの受験案内で確認しましょう。
参照元:人事院「国家公務員採用総合職試験(大卒程度試験)」
農学部で高収入を目指せる職業はありますか?
厚生労働省の職業情報提供サイトによると、獣医師の平均年収は680.5万円、畜産技術者は611.9万円です(令和7年賃金構造基本統計調査)。ただし、獣医師になるためには、獣医学科の卒業と国家試験の合格が条件となります。収入は職場や地域、勤続年数によって異なるため、求人票で給与の内訳を確認しましょう。
参照元:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「獣医師」
参照元:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「畜産技術者」
農学部は文系と理系のどちらですか?
文部科学省の学校基本調査では、人文科学・社会科学・理学・工学などとは別に、「農学」が独立した区分です。一般的には理系に分類されることが多いものの、農業経済学など経済・経営を学ぶ学科は、大学によって文系科目で受験できる場合があります。受験を検討する際は、志望する大学・学科の入試科目を確認しましょう。