フリーターの税金はいくら?計算シミュレーションやきついときの対策も紹介
フリーターは税金を納めなければならないのか、毎月いくら払うのか、よく分からず不安に思う方もいるでしょう。
フリーターが払う主な税金は、「所得税」と「住民税」の2つです。しかし、状況によっては国民健康保険と国民年金の保険料も支払う必要があります。
このコラムでは税金の仕組みや払い方を詳しく解説。また、年収やバイト先によって支払う必要がある社会保険料についてもまとめました。計算シミュレーションを参考にして、自分が支払う税金や保険料を把握しておきましょう。
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フリーターが納める税金とは?

フリーターが支払う税金には「所得税」と「住民税」があります。正社員と同じく、どちらの税金も年収が一定を超えた場合に納めなくてはなりません。状況によっては「国民健康保険(国保)」や「国民年金」の保険料も支払いが必要です。
「フリーターが支払う税金は月いくらなの?」と具体的な金額を知りたい人もいるようですが、一概にいくらとはいえません。納める税金の有無や支払い額は、収入によって異なることを理解しておきましょう。
フリーターが収める必要のある税金にはどのようなものがありますか?全体的な概要をわかりやすく教えてください
代表的な税金は所得税と住民税で、所得によって納める額が多くなります
フリーターが納める税金で、代表的なものは所得税と住民税です。
所得税は国に納める税金で、収入から給与所得控除、そして基礎控除を控除して求めます。人によっては配偶者控除や扶養控除などの所得控除が適用される可能性があるでしょう。
一方、住民税は住んでいる自治体へ納める税金です。フリーターの場合、前年の所得に応じて、均等割と所得割が課税されます。自治体によって税率や額が異なる場合があるものの、均等割は所得に関わらず一定額、所得割は課税所得金額に10%を乗じた金額を納めるものです。6月頃に納税通知書が届き、その後分割または一括で納付します。
注意点として、所得税と住民税で支払い義務の生じる年収額が異なることが挙げられるでしょう。所得税の場合、年収が103万円を超えると。支払い義務が生じます。一方、住民税は自治体によって異なるものの、年収が100万円を超えると支払いを求められる場合が一般的です。
フリーターが納める税金1:所得税
所得税とは、1年間の所得に対して一定の税率を課す税金です。所得が103万円を超えている場合、フリーターも所得税の課税対象となります。
国税庁の「No.2260 所得税の税率」によると、所得金額ごとの所得税の税率は以下のとおりです。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円から194万9,000円まで | 5% | 0円 |
| 195万円から329万9,000円まで | 10% | 9万7,500円 |
| 330万円から694万9,000円まで | 20% | 42万7,500円 |
| 695万円から899万9,000円まで | 23% | 63万6,000円 |
| 900万円から1,799万9,000円まで | 33% | 153万6,000円 |
| 1,800万円から3,999万9,000円まで | 40% | 279万6,000円 |
| 4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
参照:国税庁「No.2260 所得税の税率」
所得税は給与から毎月天引きされるのが一般的です。天引きされる所得税は仮定の金額で、多めに納税している場合が多いでしょう。正式な所得税額は年末調整で明らかになり、払い過ぎた分は返還されます。
参照元:国税庁「No.2260 所得税の税率」
フリーターが納める税金2:住民税
住民税は都道府県および市区町村に納める税金であり、前年度の年間所得に対して課税されます。住民税は、前年度の所得に応じて変わる「所得割」と、すべての住民に一律に課される「均等割」の合算で決定するのが基本です。
なお、年収100万円未満の場合は非課税になる自治体もあります。
正社員の仕事を辞めてフリーターになる場合の税金は?
正社員からフリーターになる場合に気を付けたい税金は、住民税です。住民税は前年度の所得をもとに計算されます。そのため、フリーターになって収入が減ったにもかかわらず「住民税が高くて驚いた」というケースもあります。
正社員の仕事を辞めてフリーターになろうと考えている方は、あらかじめ貯金をしておくといった対策をするのがおすすめです。
正社員を辞めてフリーターになる際に、税金関連で気を付けるべき3つのポイント
【1】所得税
収入が年間103万円を超えた場合(※)、所得税の納付が必要です。収入から所得税が引かれた場合、手取りは減ります。また、正社員を辞めた年にフリーターとしての収入がある場合には合算される点にも気を付けましょう。
※2024年12月16日現在。今後の政府方針により、変更となる場合があります。
【2】住民税
住民税は前年の所得を基準に計算され、納付額が決まります。前年まで正社員として収入を得ていた場合、フリーターになり収入を減らしたとしても、前年の収入に基づいた金額の住民税を納めることになりますので、気を付けましょう。
正社員からフリーターになったあとに支払う税金を考慮して、貯金しておくことをおすすめします。
【3】確定申告
フリーターとして複数の勤務先を掛け持ちしている場合や、正社員を辞めてフリーターになった年には、確定申告で納税額を決める必要があります。確定申告は面倒な手続きではありますが、申告せずそのままにしていると、税金の追納が必要になります。確定申告を適切に行いましょう。
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フリーターが税金のほかに支払う3つの保険料

フリーターは税金以外にも、健康保険料・年金保険料・雇用保険料などの支払いが必要です。フリーターも条件を満たせばこれらの保険に会社をとおして加入することができ、その場合は個人で加入するのに比べて保険料の負担が軽くなります。
ここでは、それぞれの仕組みや払い方を解説するので参考にしてみてください。
フリーターが支払うべき保険料にはどのようなものがあるか教えてください
健康保険料と年金保険料は必須。条件により雇用保険の支払いも必要です
フリーターが支払うべき保険料は、必ず発生する「健康保険」と「年金保険」、条件に該当する場合に支払う「雇用保険」の3つです。
アルバイト先で社会保険に加入する場合は、健康保険料と年金保険料が毎月のアルバイト代から天引きされます。社会保険に加入しない場合には、個人事業主と同じように、自ら国民健康保険と国民年金の加入手続きを行ない、保険料を自分で支払います。
健康保険は、保険適用となる病気やケガの治療を受けるために必要です。医療機関にて保険証を示すことで、治療費は3割負担となります。年金保険は、老後に受け取る老齢年金のみならず、障がいを抱えた際や死亡時に受け取れる障害年金や遺族年金も含まれています。
また、雇用保険は失業給付を受給するための保険です。現在定められている「31日以上の雇用見込みがある」「所定労働時間が週20時間以上である」「学生ではない」という加入要件を満たした場合、アルバイトの給料から雇用保険料が天引きされます。
フリーターが税金のほかに支払う保険料
- 健康保険料
- 年金保険料
- 雇用保険料
1.健康保険料
健康保険料とは、病気・ケガ・休業・出産・死亡などといった不測の事態に備えて支払うお金です。フリーターは、勤務先や働き方次第でアルバイト先の健康保険に入れないこともあります。その場合は、国民健康保険(国保)への加入が必要です。
国民健康保険料
国民健康保険とは、会社に勤めていないフリーランスや自営業の人、年金受給者など、ほかの医療制度に加入していない人が対象の保険制度です。勤め先の健康保険に加入していないフリーターは、国民健康保険に加入する義務があり、保険料を支払わなければなりません。
毎月の支払いを負担に感じるフリーターの方もいるようですが、保険料を納めることで医療費の自己負担額を抑えられます。
国民健康保険料の計算方法は自治体によって異なるため、住んでいる市区町村のWebサイトをよく確認しましょう。なお、年収130万円未満のフリーターが親や配偶者の扶養内で働く場合は、国民健康保険(国保)への加入が免除されます。
健康保険(健康保険組合、全国健康保険協会)の健康保険料
健康保険とは、民間企業に勤める人やその家族が加入する医療保険です。フリーターも一定の条件を満たせば健康保険に加入できます。
アルバイト先の健康保険に加入できれば、健康保険料の半額を会社が負担してくれます。健康保険料は組合・協会によって料率が異なり、全国健康保険協会 協会けんぽの「令和7年度都道府県単位保険料率」を参考にすると、協会けんぽの健康保険料率(東京都)は9.91%です。
たとえば、月給が15万円の場合、健康保険料は1万4,865円で、本人負担額は7,432円となります。
参照元:全国健康保険協会 協会けんぽ「トップページ」
フリーターも条件を満たせば社会保険の適用対象になる
社会保険とは、厚生年金・健康保険・雇用保険・労災保険・介護保険の総称です。
厚生労働省の「社会保険適用拡大特設サイト『パート・アルバイトのみなさま』」によると、以下の条件を満たした労働者が加入対象となります。
- ・1カ月の賃金が8万8,000円以上
・勤務先の従業員数が101人以上
・雇用期間の見込みが2カ月以上
・学生ではない
・1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満
※介護保険は40歳以上65歳未満の人が対象
上記の要件に当てはまるフリーターは、社会保険の適用対象となります。また、2024年10月以降は従業員数51人以上の勤務先で働いている場合も対象です。
参照元:厚生労働省「社会保険適用拡大特設サイト 厚生労働省から法律改正のお知らせ」
2.年金保険料
年金保険料の種類は、大きく分けて「国民年金保険料」と「厚生年金保険料」の2つです。フリーターは、社会保険の加入条件を満たしていれば厚生年金への加入もできます。
そもそも「年金」とは
年金には「老齢年金」「障害年金」「遺族年金」があり、一般的にイメージされるのは「老齢年金」のことです。老齢年金は老後の暮らしを支える社会保険制度で、原則として65歳から受給できます。ただし、保険料納付済期間と保険料免除期間を合算した資格期間が10年以上必要です。
将来年金を受け取るためには雇用形態にかかわらず、国民年金保険料または厚生年金保険料を納める必要があります。
国民年金保険料
国民年金保険料とは、「老齢基礎年金」や「障害基礎年金」「遺族基礎年金」を受給するために、毎月一定額納めるお金です。国民年金への加入は、日本に住む20歳以上60歳未満のすべての人が対象となります。
日本年金機構の「国民年金保険料」によると、2025年度の1カ月当たりの国民年金保険料は1万7,510円です。
国民年金保険料は一律で決まっており、物価や賃金の伸び率に応じて毎年計算されています。なお、厚生年金に加入しているフリーターの場合は、厚生年金保険料に国民年金保険料も含まれているので、別々で納める必要はありません。
厚生年金保険料
厚生年金保険料とは、「老齢厚生年金」「障害厚生年金」「遺族厚生年金」を受給するために、毎月一定額支払うお金を指します。老齢厚生年金は前述の「老齢基礎年金」に上乗せして支給される年金のことです。厚生年金に加入すれば、定年後は国民年金と合わせた分の年金を受給できるので、国民年金のみに加入している人に比べて受給額が多くなります。
前述のとおり、条件を満たしている場合はフリーターも加入対象です。
日本年金機構の「厚生年金保険の保険料」によると、厚生年金保険料の計算方法は以下のようになっています。
| 保険料の種類 | 保険料額の計算方法 |
|---|---|
| 毎月の保険料額 | 標準報酬月額×保険料率 |
| 賞与の保険料額 | 標準賞与額×保険料率 |
参照:日本年金機構「厚生年金保険の保険料『1.保険料』」
厚生年金保険料率は、2017年9月以降18.3%で固定されています。厚生年金保険料は、毎月の給与を一定の幅で区切った金額を標準報酬として、その金額に18.3%を掛けたものです。保険料の支払いは被保険者と事業主の折半になります。具体的な金額は以下のとおりです。
【令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和7年度版)】
| 報酬月額(月給+通勤費+諸手当) | 標準報酬 | 厚生年金保険料(全額) | 厚生年金保険料(折半額) |
|---|---|---|---|
| ~9万3,000円 | 8万8,000円 | 1万6,104円 | 8,052円 |
| 9万3,000円~10万1,000円 | 9万8,000円 | 1万7,934円 | 8,967円 |
| 10万1,000円~10万7,000円 | 10万4,000円 | 1万9,032円 | 9,516円 |
| 10万7,000円~11万4,000円 | 11万円 | 2万0,130円 | 1万0,065円 |
| 14万6,000円~15万5,000円 | 15万円 | 2万7,450円 | 1万3,725円 |
| 19万5,000円~21万円 | 20万円 | 3万6,600円 | 1万8,300円 |
| 25万0,000円~27万円 | 26万円 | 4万7,580円 | 2万3,790円 |
参照:日本年金機構「保険料額表(令和2年9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)」
参照元:日本年金機構「国民年金の保険料」
参照元:日本年金機構「健康保険・厚生年金保険の保険料関係」
国民年金保険料と厚生年金保険料はどちらが高い?
国民年金保険料は給与に関係なく、1万7,510円と決まっています。一方、厚生年金保険料は上記の通り給与に応じて変わるため、どちらが高いかは報酬月額(月給+通勤費+諸手当)次第です。
たとえば、報酬月額が8万8,000円の場合、厚生年金保険料は8,052円なので国民年金保険料よりも安くなります。報酬月額が20万円だと厚生年金保険料は1万8,300円となり、国民年金保険料よりも高くなります。
3.雇用保険料
雇用保険料とは、退職後に失業手当等の各種給付を受給するために支払うお金です。雇用保険に加入すると、再就職手当や教育訓練給付金、育児休業給付金などの受給対象者となります。フリーターも、下記の要件を満たすことで雇用保険への加入が可能です。
- ・雇用期間の見込みが31日以上
- ・1週間の実働時間が20時間以上
フリーターが退職後に仕事探しをする際、失業手当の支援があれば就職活動の費用負担を軽減できるでしょう。
参照元:厚生労働省「雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!」
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フリーターが知っておくべき税金の控除

ここでは、フリーターの税金に関する基礎控除・給与所得控除・扶養控除・配偶者控除の4つをご紹介します。
控除(こうじょ)とは、「差し引く」という意味です。税金は、所得から控除額を引いた額に税率を掛けて算出されます。
iDeCoに加入することで更なる控除が受けられる
税金控除には、生命保険料控除や扶養控除、医療費控除などさまざまな控除があります。
フリーターは基本的に退職金がないので、iDeCoを積極的に活用しましょう。iDeCoは、毎月自分で掛金を拠出して運用方法を選択し、60歳以降に年金または一時金として受け取ることができる私的年金制度です。運用益が非課税で再投資されるため、長期的な資産形成に適しています。
掛け金は全額が所得控除(小規模共済等掛金控除)の対象です。iDeCoは途中で脱退できないため、加入をためらう方もいるものの、途中で掛金の拠出を停止することも可能です。
また、ふるさと納税を利用することで寄附金控除の対象となります。ふるさと納税とは、好きな自治体に寄付をすることで、所得税と住民税の控除を受けられる制度です。寄付のお礼として、自治体から特産品などの返礼品を受け取ることができます。
さらに生命保険に加入しているなら、生命保険料控除などの活用も有効です。
フリーターにとって税金は大きな負担となりますが、控除制度を理解し、適切に活用することで、節税効果を高められます。確定申告の手続きは煩雑に感じるかもしれませんが、結果的に大きなメリットにつながるため、積極的に取り組むのがおすすめです。
1.基礎控除
基礎控除とは確定申告や年末調整で所得税の金額を計算する際に、総所得額から差し引かれる控除のことです。所得があるすべての人が対象となり、控除額は納税者の所得額によって異なります。
国税庁の「No.1199 基礎控除」によると、所得額ごとの控除額は以下のとおりです。
| 納税者本人の合計所得金額 | 控除額(2024年分 以前) | 控除額(2025・2026年分) | 控除額(2027年分 以降) |
|---|---|---|---|
| 132万円以下 | 48万円 | 95万円 | 95万円 |
| 132万円超336万円以下 | 48万円 | 88万円 | 58万円 |
| 336万円超489万円以下 | 48万円 | 68万円 | 58万円 |
| 489万円超655万円以下 | 48万円 | 63万円 | 58万円 |
| 655万円超2,350万円以下 | 48万円 | 58万円 | 58万円 |
| 2,350万円超2,400万円以下 | 48万円 | 48万円 | 48万円 |
| 2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 | 32万円 | 32万円 |
| 2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 | 16万円 | 16万円 |
| 2,500万円超 | 0円 | 0円 | 0円 |
参照:国税庁「No.1199 基礎控除『基礎控除の金額』」
2019年までの基礎控除の控除額は一律38万円でしたが、2020年から所得に応じて控除額も変動するよう改正されました。さらに、2025年にも税制改正が行われ、12月1日から上記の控除額になります。
たとえば、年収が200万円のフリーターの場合、2025年12月1日からは控除額の95万円を引いた105万円に所得税が課せられることになります。
2.給与所得控除
給与所得控除は給与所得から一律に差し引かれる控除で、給与を支給されている会社員やフリーランスが対象です。自営業者などは対象になりません。
国税庁の「No.1410 給与所得控除」によると、収入額ごとの給与所得控除額は以下のとおりです。
| 給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額(2025年分以降) |
|---|---|
| 190万円まで | 65万円 |
| 190万1円から360万円まで | 収入金額×30%+8万円 |
| 360万1円から660万円まで | 収入金額×20%+44万円 |
| 660万1円から850万円まで | 収入金額×10%+110万円 |
| 850万1円以上 | 195万円(上限) |
参照:国税庁「No.1410 給与所得控除『令和7年分以降』」
上記は、2025年12月1日から適用されます。2020〜2024年分の給与所得控除については、国税庁の「No.1410 給与所得控除」をご覧ください。
3.扶養控除
扶養控除とは、納税者に「16歳以上(年末調整を受ける年の12月31日時点)の扶養親族」がいる場合に受けられる控除です。
国税庁の「No.1180 扶養控除」には、区分ごとの控除額が以下のように記されています。
| 区分 | 控除額 |
|---|---|
| 扶養親族が16歳以上 | 38万円 |
| 控除対象扶養親族が19歳以上23歳未満 | 63万円 |
| 控除対象扶養親族が70歳以上で同居していない | 48万円 |
| 控除対象扶養親族が70歳以上で同居している | 58万円 |
参照:国税庁「No.1180 扶養控除『扶養控除の金額』」
扶養控除は前述した基礎控除や給与控除との併用が可能です。親の扶養に入っているフリーターは、年収が103万円を超えてしまうと、親が扶養控除を受けられないので注意しましょう。
4.配偶者控除
配偶者控除とは、納税者に控除対象となる配偶者がいた場合に適用される控除です。国税庁の「No.1191 配偶者控除」によると、所得額ごとの控除額は以下のとおりです。
| 控除を受ける納税者本人の合計所得金額 | <控除額> 一般の控除対象配偶者 | <控除額> 老人控除対象配偶者 |
|---|---|---|
| 900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
| 900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
| 950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
参照:国税庁「No.1191 配偶者控除『配偶者控除の金額』」
たとえば、夫の所得が500万円で妻の所得が103万円だった場合、夫は38万円の控除を受けられます。そのため、課税対象額が462万円に下がる仕組みです。
控除額は納税者本人(前述のケースでは夫)の年収が上がるにつれて減少し、年間の合計所得金額が1,000万円を超えると控除対象外になります。
参照元:国税庁「タックスアンサー(よくある税の質問)」
フリーターが支払う税金の計算方法をシミュレーション
この項では、フリーターが支払う税金の計算方法を年収120万円と200万円のケースに分けて紹介します。前提条件は以下のとおりです。
※所得控除は2025年12月1日以降の控除額で計算しています。
- ・収入源…1つのアルバイト先のみ
- ・扶養…親や配偶者などの扶養に入っていない
- ・所得控除…「基礎控除」「給与所得控除」「社会保険料控除」の3つ
- ・控除額…前項「フリーターが知っておくべき税金の控除」のデータを使用
- ・国民健康保険料…居住地域によって算出方法が異なるため、120万円の場合は「5万円/年」「200万円の場合は10万円/年」という仮の保険料を設定して計算
- ・国民年金保険料…「2025年度の月額1万7,510円×12カ月=21万120円」で計算
- ・住民税の算出にかかる前年度の年収…今年度と同様とする
- ・住民税の所得割…10%、均等割は5,000円で計算
【年収120万円のケース】
年収120万円のフリーターが支払う税金の計算方法は、以下のとおりです。
所得税の計算方法
所得税は「(収入額-所得控除)×所得税率(5%)」で計算します。復興特別所得税は計算に含めていません。
計算シミュレーション(2025年12月1日以降)
[120万円-所得控除基礎控除95万円+給与所得控除65万円+社会保険料控除(国民健康保険料5万円+国民年金保険料20万3,760円)]×所得税率5%=0円/年
上記のケースでは、所得控除によって課税所得が0円になるため所得税は発生しません。ただし、地域ごとに国民健康保険料の算出方法は異なるため、フリーターの場合も税金の支払いが必要になることもあります。
住民税の計算方法
住民税の支払額は、以下をご参照ください。
計算シミュレーション(2025年12月1日以降)
・所得割
[120万円-所得控除基礎控除95万円+給与所得控除65万円+社会保険料控除(国民健康保険料5万円+国民年金保険料20万3,760円)]×税率10%=0円/年
・均等割
5,000円/年
所得税と同様、所得控除によって所得割が0になるため、フリーターが支払う住民税は均等割の5,000円となります。
なお、親や配偶者の扶養に入っている場合、年収120万円だと社会保険料を納める必要がなく、社会保険料控除は計算に入りません。そのため、所得税が発生し住民税は均等割と所得割で計算されます。
【年収200万円のケース】
続いて、年収200万円のフリーターの税金も計算してみましょう。
所得税の計算方法
年収200万円のフリーターの所得税は、以下のとおりです。
計算シミュレーション(2025年12月1日以降)
[200万円-所得控除基礎控除95万円+給与所得控除(収入金額×30%+8万円)68万円+社会保険料控除(国民健康保険料10万円+国民年金保険料20万3,760円)]×所得税率5%=3,312円/年
年収が200万円を超えるケースでは、年に約3,000円ほどの所得税が発生することが分かります。
住民税の計算方法
住民税の計算方法は、以下をご参照ください。
計算シミュレーション(2025年12月1日以降)
・所得割
[200万円-所得控除基礎控除95万円+給与所得控除(収入金額×30%+8万円)68万円+社会保険料控除(国民健康保険料10万円+国民年金保険料20万3,760円)]×税率10%=6,624円/年
・均等割
5,000円/年
住民税は所得割と均等割の合算なので、上記の場合、年収200万円のフリーターは「所得割6,624円+均等割5,000円=1万1,624円/年」の支払いが必要です。
フリーターが税金で損しない年収はいくら?
「フリーターが税金で損しない年収は〇〇万円です」と断定することはできません。年収について「○○万円の壁」という言葉がありますが、これは社会保険料や税金が発生するボーダーラインとなる額を指します。
壁となる年収は、労働者の年齢や勤務先の規模などによって異なるので、年収いくらが壁になるかはさまざまなのです。
主な「年収の壁」と関連する社会保険・税金を表にまとめました。
| 106万円の壁 | 社会保険料が発生(条件を満たす短時間労働者) |
|---|---|
| 130万円の壁 | 社会保険料が発生(一般) |
| 150万円の壁 | 社会保険料が発生(19歳以上23歳未満) |
| 160万円の壁 | 所得税の課税 |
106万円の壁
年収106万円を超えると、社会保険の加入義務が発生します。ただし、以下の条件を満たした場合が対象です。
- ・従業員51人以上の事業所で働いている
- ・週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
- ・月の所定内賃金が8万8,000円以上(年収約106万円)
- ・2カ月を超えて雇用される見込みがある
- ・学生ではない(休学中・夜間学生は除く)
なお、年収106万円に交通費は含まれません。
130万円の壁
「130万円の壁」とは、「106万円の壁」に該当しない人において、社会保険料が発生する年収です。月の収入に換算すると、約10万8,000円になります。ただし、年収130万円には交通費も含まれる点に注意が必要です。
「106万円の壁」では交通費が含まれないため、同じつもりで交通費を計算に入れていないと、年収130万円を超えてしまうことがあります。130万円を超えると、給料から社会保険料が天引きされ、手取りが減ることを覚えておきましょう。
150万円の壁
「150万円の壁」は、19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定に関わる年収です。被扶養者とは、被保険者の父や母、祖父母や夫・妻のこと。同居していなくても、家計をともにしていれば対象です。
たとえば、1人暮らしのフリーターで、親からの仕送りが主な生活費の場合、年収が150万円未満であれば自分で社会保険料を支払う必要はありません。
160万円の壁
「160万円の壁」は、所得税が課税されるかどうかのボーダーラインです。前述のとおり、所得税には基礎控除と給与所得控除があります。
2025年12月1日以降、それぞれの控除額は以下のとおりです。
【基礎控除】年収132万円以下…95万円
【給与所得控除】年収190万円以下…65万円
上記の合計額が160万円なので、年収160万円未満の場合は控除によって課税対象額が0円になります。
「年収の壁」を気にせず収入アップを目指すのが望ましい
「年収の壁」を気にして働き方を調整すると、税金や社会保険料の負担を減らせるメリットがあります。しかし、長い目で見ると、働き控えは成長のチャンスを逃すことになったり、将来的な年収水準を下げたりするリスクもあるでしょう。
正社員として経験を積めば、月給制による安定収入に加え、昇給やボーナスによって、年々収入を伸ばせる可能性があります。目先の手取りを気にするより、将来的なメリットを考えて働き方を選ぶことが大切です。
フリーターの税金の払い方

フリーターが税金を払う方法は、「アルバイト先から天引きされる」「自分で納税する」の2つがあります。以下では、それぞれの払い方をまとめました。
フリーターの場合、所得税や住民税は基本的に給与から天引きされます。ただし、住民税の場合、場合によっては自分で払う必要があるので、注意しておきましょう。住民税を自分で払う場合は、自治体から納付書が届きます。納付書に記載されている期限までに金融機関やコンビニで支払うようにしてください。
アルバイト先から天引きされる
フリーターの場合、基本的にアルバイト先から各種税金が天引きされます。天引きとは、雇用主であるアルバイト先が給料から税金を差し引いてくれることです。税金の支払いを代わりにしてくれるため、天引きでは所得税や住民税などの納め忘れがありません。
ただし、退職や転職をした際は、その後の納付手続きを自分で行う場合もあるので注意しましょう。
自分で納税する
収入額や働き方、会社の方針によっては、フリーター本人が税金を支払わなければなりません。住民税の納付方法には給与から天引きされる「特別徴収」のほか、自分で払う「普通徴収」があります。
普通徴収の対象者には6月ごろ自宅に納付書が届くので、コンビニや金融機関で税金を支払いましょう。納付期限を過ぎてしまうと納付書が使えなくなる場合もあるため、余裕をもった対応が大切です。
なお、住民税の納付書は4枚で1年分となっており、一度にまとめて送られてきます。支払いは4回に分けても一括でもOKで、どちらも金額は同じです。ただし、期日を過ぎると延滞金が発生するので注意してください。
確定申告が必要な場合もある
確定申告とは、1年間の収入に対してかかる所得税を自分で計算する手続きのことです。アルバイト先で年末調整を受けていなかったり、仕事を掛け持ちした状態で本業以外(副業)の収入が20万円を超えていたりするフリーターは、確定申告が必要になります。
一人暮らしのフリーターは月いくら必要かを把握しておこう
一人暮らしの生活費は、一月あたり約18万円程度といわれています。毎月の支出に加えて税金や保険料の支払いが発生することを踏まえ、アルバイト代をいくら稼ぐ必要があるか計算してみてください。
健康保険料を滞納すると病気やケガで働けなくなった際の保障がなくなる恐れがあるため、注意が必要です。
フリーターが税金を払ってないとどうなる?

税金を未納付でいると、催促状の送付や資産の差し押さえが行われる場合があります。手続きを疎かにすれば、延滞金が発生したり医療費が高額になったりする恐れがあるので、税金や保険料はきちんと支払いましょう。
催促状が送付される
税金を払っていないと、役所から催促状が送られてきます。それでも支払いがなされない場合は、役所から電話が来たり、職員が直接訪問したりすることも。やむを得ず支払いが遅れてしまったフリーターの方は、催促状が来た時点ですぐに支払うようにしましょう。
資産を差し押さえられる場合もある
督促状や連絡を無視すると、自動車や家電、家など資産価値があるものを差し押さえられる可能性があります。資産差し押さえの際に自分が持っている資産を隠すと、刑罰が科される場合もあるので注意してください。税金の支払いは国民の義務なので「支払いを放棄すると、日常生活が送れなくなる恐れがある」と認識しましょう。
また、国民年金保険料は長期間未納にすると、年金額が減額されたり受け取れなくなったりといったリスクもあります。
フリーターで税金や保険料の支払いがきついときの対策

「税金の支払いがきつい…」と感じたら、滞納せずに適切な対策を取りましょう。税金や保険料の負担が大きいとお悩みのフリーターは、下記で解説する3つの対処法をお試しください。
フリーターとしての収入が少なく、税金や保険料の支払いが難しい場合には、税金や保険料の支払いの減免や分割について、市区町村の役場や税務署などに相談に行きましょう。
ただし、税金の納付や保険料の支払いは法により定められており、必ず求められます。勤務時間の増加や時給の高い仕事に就くなど、今よりも収入を増やせるように努力することが大切です。
フリーターで税金や保険料の支払いがきついときの対策
- 役所の相談窓口を利用する
- 税金の控除を確認する
- 社会保険のある会社へ就職する
1.役所の相談窓口を利用する
税金や保険料が支払えないフリーターの方は、居住地を管轄する自治体の役所へ相談しましょう。役所には、納税に関する相談窓口が設けられています。担当者に相談する際は「税金が払えない理由」「税金を払う意思がある」「毎月払える金額」を伝えるのがポイントです。
支払えない理由によっては税金の免除が受けられる場合も
税金・保険料を支払えない理由によっては、支払い期限が猶予されたり、税金を免除してもらえたりすることがあります。
たとえば、所得が少なくて支払いが困難な場合は、保険料の支払いが免除または猶予となる「国民年金保険料免除・納付猶予制度」の利用が可能です。
ただし、減免制度を利用すると、将来受け取れる年金額が減るといったデメリットもあります。また、フリーター本人の所得が低くても、配偶者や世帯主の所得によっては制度を利用できないので注意しましょう。
参照元:日本年金機構「国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度」
2.税金の控除を確認する
税金を支払うのが厳しいフリーターの方は、受けられる所得控除がないか確認してみましょう。たとえば、1年間で支払った医療費の総額が10万円(所得が200万円以下の場合は、所得額の5%)を超える人は「医療費控除」、専門学校や職業訓練法人で一定の課程を履修している人には「勤労学生控除」が適用されます。
参照元:国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」
参照元:国税庁「タックスアンサー(よくある税の質問)」
3.社会保険のある会社へ就職する
税金や保険料の支払いに悩んでいるフリーターの方は、社会保険に加入できる会社に転職するのがおすすめです。支払いに関する複雑な手続きを会社が行ってくれたり、保険料の自己負担割合が50%になったりします。税金や保険料は給与からの天引きとなり、支払いの負担も軽減されるでしょう。
また、正社員は雇用・収入が安定するため、「今月はシフトにあまり入れなかったから税金の支払いがきつい…」といった心配もありません。税金のためにアルバイトの仕事を掛け持ちしているフリーターや、将来の保障に不安がある方は、正社員への就職を検討してみてください。
【まとめ】税金の支払いに不安があるフリーターは正社員を目指そう
税金や保険料は、原則誰もが納めなければなりません。家族の扶養に入れば支払わなくても済みますが、扶養されなくなれば自分で支払う義務が生じます。正社員は税金や保険料の支払いを免れられないものの、自己成長という点で得られるメリットは大きいです。
税金の支払い額を気にするより、収入アップを目指して就職するのが望ましいでしょう。
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フリーターの税金に関するお悩みQ&A
ここでは、フリーターが抱える税金に関するお悩みをQ&A方式で解決します。
フリーターが所得税を払うのは収入いくらから?
仕事の給与収入が103万円を超えてからです。月の給与で考えた場合、およそ8万8,000円が目安になるでしょう。
所得税額は年収によって異なり、収入が多ければ多いほど税率が上がります。基本的には雇用先で源泉徴収されるため、フリーター自身が所得税の支払い手続きをする必要はありません。
フリーターが住民税を払うのは収入いくらから?
自治体により異なりますが、前年度の総年収が100万円を超えると支払い義務が発生します。そのため、仕事を辞めて収入がない年であっても、前年度に100万円を超える収入があれば支払い義務が生じるので要注意です。
フリーターは税金をいつ払うの?
所得税も住民税も毎月の給与から天引きされるので、自分で支払う必要はありません。
ただし、収入額や働き方、会社の方針によっては自分で税金を支払う必要があります。なお、住民税は総年収が100万円以下の方は課税の対象になりません。
フリーターも確定申告をするべき?
状況によっては確定申告が必要です。たとえば、「2つ以上の仕事を掛け持ちしていて、メイン以外(副業)の年間収入が20万円を超える」「職場が年末調整を行っていない」といった場合は、確定申告を行う必要があります。
確定申告を行う際は、源泉徴収票や確定申告書、所得控除用の書類などを用意しましょう。
フリーターは税金を支払うべきですか?
税金は支払い義務があります。フリーターが支払う主な税金は所得税と住民税です。収入や就業先によっては、国民健康保険料や国民年金保険料の支払いが求められることもあります。
月収から税金や保険料が天引きされない場合は、自分で手続きをして支払いましょう。
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京都大学工学部建築学科を2010年の3月に卒業し、株式会社大林組に技術者として新卒で入社。
その後2012年よりレバレジーズ株式会社に入社。ハタラクティブのキャリアアドバイザー・リクルーティングアドバイザーを経て2019年より事業責任者を務める。
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