見込み残業とは?みなし残業との違いと違法になるケースを解説

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この記事のまとめ

  • 見込み残業とは、想定される残業時間分の残業代をあらかじめ給与に含められる制度
  • 見込み残業制は「固定残業代制」と「みなし労働時間制」の2種類に大別される
  • 見込み残業代以上に残業した場合、想定時間を超えた残業代も請求できる
  • 見込み残業制でも、超過分の残業代が未払いの場合は違法性がある
  • 見込み残業時間を超えた分の残業代が支給されていない場合は、会社に請求が可能

「見込み残業制」という言葉は聞いたことがあっても、具体的にどのような制度なのか分からないという方は多いでしょう。見込み残業には働く側のメリットもありますが、違法な労働環境になりやすいというデメリットもあります。このコラムでは、見込み残業制度の概要や違法性が疑われるパターンについて解説していきますので、参考にしてください。

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見込み残業とは

見込み残業制とは、企業側が一定の残業時間を想定し、元々の固定給の中にあらかじめ残業代を含められる制度のことです。見込み残業制は「固定残業代制」と「みなし労働時間制」の2種類に大別されます。

固定残業代制とは

固定残業代制とは、実際の勤務時間に関わらず毎月一定の残業をしているとして、固定の残業代として給与に含めることです。たとえば、時間外労働40時間を固定残業として給与に含む場合は、実際の時間外労働が40時間以内であれば追加で時間外手当が支払われることはありません。
また、固定残業は職種に関係なく適用できるのが特徴です。

みなし労働時間制とは

みなし労働時間制とは、労働時間の把握が難しい職種に対して、実際に働いた時間に関わらず予め定めた時間の労働を行ったとみなす制度です。みなし労働時間制には就業環境の違いによって、さらに3つの種類があります。

1.事業場外労働

事業場外労働とは、営業職や在宅勤務者など社内以外で仕事をする必要のある労働環境のこと。外回りなどにより正確な就労時間の計算が困難な場合、見込み残業制の適用を認めると、「労働基準法 第38の2」に記されています。

2.専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制とは、業務の時間配分を労働者に委ねる必要があるとされている場合に適用される制度です。業務の特性上、使用者側が具体的な時間配分などを指示できない職業では、見込み残業時間分も働いたこととみなすと「労働基準法 第28条の3」に記されています。

裁量労働制の対象職種

厚生労働省によると、適用される具体的な職業は、コピーライターや弁護士、建築士など。厚生労働省が定めた19業務に当てはまる業務であれば、見込み残業制の導入が認められます。裁量労働制についてより詳しく知りたい場合は、裁量労働制の概念について紹介している記事「裁量労働制が適用される職種は?残業代はどうなる?」をチェックしてみてください。
 

参照元
厚生労働省
専門業務型裁量労働制

3.企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制とは、事業運営に関わる重要な企画や立案を行う事業場に適用される制度。企業の本社や本社の指示を受けていない支店など、運営に大きな影響を与える決定をする必要がある事業場は、企画業務裁量労働制の導入が認められており、このことは「労働基準法 第38条の4」にも記されています。専門業務型裁量労働制と似ていますが、企画業務型裁量労働制は、労働者の創造的なスキルがより発揮できるよう制定されたものです。

参照元
e-Govポータル 
労働基準法

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見込み残業制のメリット

見込み残業を採用した場合の企業側のメリットは、人件費の見通しが立ちやすいことです。会社では人件費が大きな割合を占めていますが、どの残業が売り上げに貢献しているのか分かりません。そのため、売り上げに貢献しているであろう残業代をあらかじめ給与に含むことで、月々の人件費の変動を押さえる仕組みとなっています。
従業員側のメリットは、見込み残業代より実際の残業時間が短ければ得をすることです。たとえば給与規定で「月40時間分の残業代を含む」と記載されている場合、実際の残業時間が30時間であっても支給される給与額は変わりません。そのため、従業員は残業時間が少なくても一定の給与を得ることができます。残業時間により支払われる給与が大きく変わるより、毎月の固定給が安定すると働く側としても管理しやすいのではないでしょうか。

見込み残業分以上に残業したときの残業代は?

見込み残業制の場合であっても、想定時間を超えた残業代は支給されます。使用者は、時間外労働分の賃金を労働者に支払わなくてはいけないことが、「労働基準法 第37条」にも記載されています。
見込み残業制を残業代固定と勘違いしている方も多いので注意しましょう。

この見込み残業制度を悪用し、残業代を支給しないというブラック企業も存在するようです。残業時間の問題で裁判になったパターンも多く見られ、労働者側が勝訴し、未払いだった残業代を請求し支払わせたという事例もあります。
もしも見込み残業を超えた分の残業代が支給されていないことが発覚し、訴えを起こすという場合には、タイムカードや勤務時間表など残業時間が分かる資料と、残業代が支払われていないことが証明できる給与明細などが必要です。なお、働いた分の残業代が支払われている場合でも、自分で状況を把握するため、出勤日数・勤務時間をきちんと記録しておきましょう。

参照元
e-Govポータル 
労働基準法

見込み残業代を除く残業代の計算方法

残業代は「1時間あたりの賃金額×残業時間×割増率」で算出可能です。
残業代は基本的に割増賃金となるため、計算をする際は気をつけましょう。割増賃金には、時間外(残業)手当・休日手当・深夜(22時~5時)手当の3種類あり、条件によって25~75%の割増率が適用されます。法定労働時間(40時間)を超えた場合の通常の割増率は25%であるため、残業時間が週40時間を超えた場合は残業時間×基礎時給で出た値にさらに25%をかけて算出しましょう。
なお、時間あたりの賃金額は、「月の所定賃金額÷1ヶ月の平均所定労働時間」で計算できます。

1ヶ月の所定労働時間を170時間と想定した計算例

月給25万円(見込み残業代3万円含む)で、月に25時間残業した場合の残業代の計算方法は以下のとおりです。

250,000円(月給)-30,000円(見込み残業代)=220,000円
220,000円÷170時間(所定労働時間)=1,294.11円

上記の計算をすると、1時間あたりの賃金額が約1,294円であることが分かります。
さらに、残業代の計算式に則って、1,294円×25時間(残業時間)×25%(割増率)を計算すると、約40,437円となり、見込み残業代として支給されている3万円を上回った金額に。
この場合、見込み残業代が支給されていても、差額の10,437円を残業代として受け取れます。

見込み残業が違法になる7つのパターン

一定額の給与が保証される見込み残業ですが、違法性が疑われる場合もあります。ここでは見込み残業制について違法になるパターンを紹介。見込み残業制を採用している会社に勤めている方はもちろん、転職を考えている方も参考にしてみてください。

1.見込み残業制であることが周知されていない

見込み残業制を採用している(今後する)場合、社員や応募者に周知することが義務付けられており、知らされていない場合は違法性が疑われます。厚生労働省の通知に記載されているように、見込み残業代を除いた「基本給の額」「見込み残業代に関する労働時間数と金額の計算方法」「見込み残業時間を超えた分の労働に対して割増賃金を追加で支給する旨」がすべて求人表や募集要項に示されているか確認してみてください。すでに見込み残業代を採用している会社で働いている方は、給与規定を確認してみましょう。

参照元
厚生労働省
固定残業代を賃金に含める場合は適切な表示をお願いします

2.見込み残業時間を超過した分の給与が未払い

前述のとおり、見込み残業制であっても想定時間を超えて働いた分の残業代は労働者に支給する必要があります。想定時間を超えた労働をしているにもかかわらず「うちは見込み残業制だから追加の残業代は発生しない」と言われた場合は、違法性が疑われるでしょう。

3.月45時間以上の見込み残業が設定されている

残業時間(時間外労働)は、1ヶ月につき45時間、1年で360時間までと「労働基準法36条」で定められています。はじめから45時間以上の残業が想定されている場合は、法律に反した運営をしている可能性が高いので要注意。
なお、45時間以上の見込み残業を設定することは法律違反となりますが、残業時間が45時間を超えているからといって必ずしも違法とはいえません。特別条項付き36協定を締結している場合は、この限りではないので注意しましょう。

参照元
e-Govポータル 
労働基準法

特別条項付き36協定とは

特別条項付き36協定とは、一定期間のみ時間外労働の上限時間を延長できるようにする協定です。
繁忙期や決算期など、時間外労働の上限時間を超えて働く必要のある期間が予想される場合、労働者と特別条項付き36協定を結ぶことで、通常より長い残業を課せられます。
とはいえ、特別条項付き36協定を結んでも上限時間を延長できるだけであり、無制限に残業をさせられるわけではありません。特別条項付き36協定の適用条件や上限時間については、「みなし残業の上限は何時間?年俸制の場合は?違法残業の見分け方や対処法も」をチェックしてみてください。

4.基本給が最低賃金を下回っている

見込み残業代を除く基本給が最低賃金を下回っている場合も、違法性が疑われます。使用者は、労働者に最低賃金以上の金額を支払わなくてはならないと「最低賃金法 第4条」に記載されており、最低賃金を下回る給与を設定することは法律違反です。
また、なかには給与に見込み残業代を含む代わりに、基本給を下げて対応する企業もあるそう。一見、違法性のない金額に見えても実は法律に則っていない場合もあります。基本給はいくらで、見込み残業代はいくらか?を事前に把握しましょう。

参照元
e-Govポータル 
最低賃金法

5.肩書きだけの管理監督者にされている

管理監督者に関する規定を適用するため、名ばかりの管理者として設定されていることもあるようです。業務内容がほかの社員と同じであるにも関わらず、管理監督者として設定されている場合、違法性が高いといえるでしょう。管理監督者とは、労働時間などに関する規定が適用されない立場であり、その旨は「労働基準法 41条」にも記されています。管理監督者の妥当性については、管理監督者の要件について詳しく紹介している記事『「名ばかり管理職」とは?』をチェックしてみてください。

参照元
Govポータル 
労働基準法

6.残業が少ない月に定額の残業代を減らされている

見込み残業制とは、残業の有無にかかわらず規定の残業代を給与として支払う仕組みです。そのため、実際の残業時間が少ない月に固定で支払われるはずの残業代が減らされているという場合は違法性があります。

7.超過分を残業が少ない月に支払ったことにされる

前述のとおり、見込み残業制であっても想定時間を超過した残業に関しては残業代を支払わなくてはなりません。しかし、残業の多い月に超過分の残業代を支払わず、残業が少ない月に固定の残業代を支払うことで超過分の残業代を支払ったことにしている場合もあるようです。法律に則って、正しく請求しましょう。

見込み残業の違法性に気づいた際の4つの対処法

勤めている会社の見込み残業に違法性が疑われる場合、どのように対処すればよいのでしょうか。ここでは違法性に気づいた場合の4つの対処法について詳しく紹介します。

1.残業代が未払いの場合は証拠を会社に提出する

本来であれば支給されるべき残業代が支給されていないことに気づいた場合は、証拠を集めて会社に請求をしましょう。「見込み残業時間を超えた分の残業代をもらえていないようなのですが…」と口頭で伝えるだけでは、会社側にあしらわれてしまう恐れがあります。タイムカードや勤務時間表など、見込み残業時間以上の労働をしていることが証明できるものを用意してから請求しましょう。

2.労働基準監督署に相談する

違法な労働環境を社内の方に相談しても改善が見られない場合、会社が位置する地区を管轄する労働基準監督署に相談をしてみるのも一つの方法です。その際は、未払いの残業代を請求する際と同様、証拠を持っていきましょう。注意点については、「労働基準監督署に相談できるのはどんなこと?電話やメールでも大丈夫?」をチェックしてみてください。

3.裁判所に申し立てをする

法律に則って見込み残業制の運営がされていないことを会社に言っても改善されない場合や、言いづらさを感じる場合は、裁判所に申し立てをするという方法もあります。ただし、裁判を起こしてもすぐに解決されるわけではありません。判決が出るまでに半年以上かかる場合もあります。また、弁護士に依頼する場合は、費用が発生することも頭に入れておきましょう。

4.転職を検討する

違法性のある就業環境かつ改善が見込めないときは、転職を検討したほうが良いでしょう。正当な給与を請求しても支払われないというつらい環境で働き続けることで、心身に不調をきたしてしまう可能性もあります。転職をする際は、求人表に記載されている条件をよく確認することが大切です。

納得できる給与体制の会社を見つけるには

見込み残業代制度は、メリットもあるものの扱いによっては違法性が高まるなどデメリットもあります。企業が正しく見込み残業制度について理解しているのかがポイントになるため、求人票などで「見込み残業」と記載がある場合は正しく運用されているか確認することをおすすめします。

しかし、企業の内情について知る手立ては少ないのも事実。そんなときは就職エージェントのハタラクティブをご利用ください。ハタラクティブは、扱うすべての求人・企業に訪問を行い、信頼できる情報のみを提供している就職・転職支援サービスです。専任アドバイザーによる就職アドバイスも実施。どんな企業を選べばいいか、どんな点に注意すればいいかなど、プロの視点から就職・転職をサポートいたします。

見込み残業に関するお悩みQ&A

法律が複雑なこともあり、自身の就業環境が適切なものか分からない場合もあるでしょう。ここでは、想定される見込み残業に関するお悩みをQ&A方式で解決していきます。

見込み残業時間を超える残業をしたら損?

想定時間を超えた分の残業代が支給されるため、損をすることはありません。万が一、支給されるべき残業代が未払いの場合は、証拠を揃えて会社に請求をしましょう。証拠がない場合は、会社に労働時間の記録を開示してもらうことで解決できます。残業申請の注意点については「記録をつけておこう!残業申請の方法と注意点とは」をご覧ください。

見込み残業制の場合、残業は断れない?

残業は業務命令となるため、やむを得ない理由があるときを除き、断ることはできません。ただし、残業代の未払いがある場合は、正当な残業指示とは見なされないため断れます。残業の強要を断れるケースについては「残業の強制はパワハラ?無意味な残業を強要された時の対処法とは?」をご覧ください。

残業が見込み時間より少ないと給与は減る?

実際の残業時間が想定時間より短くても、一定の残業代込みの給与が固定されているため見込み残業代が減額されることはありません。実際の残業時間に関わらず、一定の給与が支給されるのは見込み残業制のメリットでもあります。残業時間が想定時間よりも長くなった場合は、残業代を請求できるので自身の勤務記録はしっかりとつけておきましょう。

見込み残業が40時間って違法?

違法な時間外労働とされるのは1ヶ月の残業時間が45時間を超えたときであり、40時間は違法ではありません。なお、45時間を超えた月が1回あったとしても、特別条項付き36協定を締結している場合は、こちらも違法とはなりません。残業時間の上限については「みなし残業の上限は何時間?年俸制の場合は?違法残業の見分け方や対処法も」で詳しく解説しています。

残業代の未払いは泣き寝入りするしかないの?

残業代の未払いは証拠を集めて、会社に請求できます。証拠がない場合は、会社に労働時間の記録を提出してもらいましょう。会社側は労働者の勤務時間の記録を3年間保管する義務があるため、「ない」と言われても諦める必要はありません。請求をする精神力が残っていない場合は、転職をするのも一つの方法です。ハタラクティブでは、実際に訪問した企業の求人を紹介しておりますので、労働環境に悩んでいる方はぜひ一度ご相談ください!

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