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有給取得の理由で「私用」はダメ?目的を聞かれるのは違法なのか解説
更新日
この記事のまとめ
- 有給は勤務開始から6ヵ月経過、かつ出席日数8割以上の労働者に与えられる権利
- 有給は「労働者が休む権利」のため取得に理由は不要
- 有給の申請時、過度に理由を聞くことはパワハラに該当する恐れがある
- 有給取得により業務に大きな支障が出る場合、企業は時季指定権を行使できる
有給取得に特別な理由がない場合、休みづらい方もいるでしょう。中には、理由を詳しく聞く会社もありますが、そもそも有給休暇は取得理由を伝えなくてもいいとされる制度です。
このコラムでは、有給取得の理由が「私用のため」ではダメなのかに加え、勤続年数ごとの有給付与日数、会社に伝えやすい有給理由の例を紹介。労働者の権利である有給休暇の正しい知識を身につけ、スムーズに取得するための参考にしてください。
有給の理由は「私用」でOK!
有給の取得理由は「私用のため」で問題ありません。なぜなら、有給休暇は「心身の疲労を回復させる」「ゆとりある生活の保障」を目的に、労働基準法で定められている労働者の権利のためです。
法律で定められている以上、会社側はどのような理由であれ有給休暇を認める必要があります。会社によっては申請用紙で取得理由の記入が求められるケースもありますが、基本的には「私用のため」で問題ないでしょう。
参照元
e-Gov法令検索
労働基準法
年次有給が10日以上ある場合は5日の取得が義務に
労働基準法の改正により、法定の年次有給休暇日数が10日以上ある労働者に対し、毎年5日間は必ず取得させる義務が企業に課せられました。雇用形態を問わず、すべての労働者が対象となります。参照元
厚生労働省
働き方・休み方改善ポータルサイト
会社が有給取得の理由を聞くのは違法?
会社が有給の取得理由を聞くのは違法ではありませんが、「理由を述べないと有給が取得できない」「理由によって有給取得を拒否する」などは違法行為です。有給休暇の使い方は人それぞれのため、「引っ越しをする」「遊びに行く」といった個人的な理由でも取得できます。
有給の理由をしつこく聞かれる場合や、会社が過度に理由を確認する行為はパワハラに該当する恐れもあります。有給取得を含め、会社でのパワハラで悩んでいる方は「上司からのパワハラ対処法を紹介!特徴やハラスメントの種類も解説」のコラムも参考にしてみてください。
有給休暇の対象者は条件を満たすすべての労働者
年次有給休暇の付与対象者は、働きはじめてから6ヵ月間が経過、かつ全労働日内で8割以上の出勤日数がある労働者です。勤続年数に対する有給休暇の付与日数は、以下のとおりです。
勤続年数 | 付与日数 |
---|---|
6ヵ月 | 10日 |
1年6ヵ月 | 11日 |
2年6ヵ月 | 12日 |
3年6ヵ月 | 14日 |
4年6ヵ月 | 16日 |
5年6ヵ月 | 18日 |
6年6ヵ月以上 | 20日 |
引用:厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト 年次有給休暇とは」
正社員のほか、パートやアルバイトも条件を満たせば有給休暇の付与対象です。なお、有給休暇の有効期限は正規・非正規雇用に関係なく、取得日から2年間と定められています。
有給休暇の取得や利用については「有給休暇とは?付与の目的・日数・取得義務などについて解説」のコラムをご覧ください。
参照元
厚生労働省
働き方・休み方改善ポータルサイト
有給が自由に取得できないケースもある
有給休暇は法律で定められた労働者の権利であるため、基本的には自由に取得できます。しかし、従業員が有給を取得すると著しく業務に支障が出る場合に限り、企業側は取得日の変更を促せます。
有給の「時季変更権」を行使された場合
これまで説明してきた通り、基本的に有給は自由に取得できますが、業務に大きな支障が出る場合に限り、企業は「時季変更権」を行使できます。時季変更権とは有給取得による業務への重大な影響を避けるために、企業側が取得日を変更できる権利です。
たとえば「業務を担当できる代替者がおらず期日が近い」「多くの社員が希望する有給取得日が重なり、人員を確保できない」などが該当します。会社の都合にあたる、繁忙期や慢性的な人手不足などを理由にした行使は認められません。
退職時の有給消化に時季変更権は使えない
退職日が迫っている場合は、別日への変更が難しいため基本的に企業による時季変更権は使えません。そのため、退職者が退職日までの有給取得を希望していれば、会社側はやむを得ない事情があっても有給取得を拒絶できない場合が多いでしょう。参照元
厚生労働省
年次有給休暇の時季指定
「計画年休」に該当する場合
あらかじめ計画年休として有給の取得日が決められている場合は、労働者の希望による変更はできません。計画年休とは、労使協定を締結することで前もって企業側が労働者の有給休暇の取得日を決められる制度です。
有給付与日数のうち、5日を超える部分に対して適用されます。たとえば、年間の有給日数が10日であれば、5日分は企業の判断で設定可能です。原則として計画年休は拒否できないため、指定された日に休暇を取得する必要があります。
なお、「有給休暇の期限とは?消化しないとなくなるの?制度の基本を押さえよう」のコラムでは、有給休暇の期限について詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
参照元
厚生労働省
働き方・休み方改善ポータルサイト
伝えやすい有給の取得理由
有休の取得は労働基準法により定められている労働者の権利であるため、特別な取得理由は不要です。しかし、会社によっては取得理由を求められる場合も。スムーズな有給取得のために、会社に伝えやすい取得理由を紹介します。
伝えやすい有給の取得理由
- 行政への各種申請
- 冠婚葬祭
- 体調不良
- 家族の用事
行政への各種申請
市役所や保健センターなどの行政施設は平日の夕方までの開庁が多く、土日は休業しています。そのため、期日までに手続きが必要といった理由は有給申請がしやすくなるでしょう。
冠婚葬祭
冠婚葬祭は自己都合で別日に変更できないため、多くのケースは有給の取得理由として認められます。ただし、会社が慶弔休暇を導入している場合、有給とは別に特別休暇を取得できます。慶弔休暇を利用する場合は取得可能日数・申請方法など、前もって規則を確認しておきましょう。なお、場合によっては書類の提出が必要な会社もあるため、虚偽の理由で慶弔休暇を取得することはおすすめしません。
体調不良
体調不良や通院も有給の取得理由になります。体調の悪化は業務に支障をきたす可能性が高まるため、申請しやすい理由です。
ただし、企業によっては当日の有給取得を認めていないこともあります。あらかじめ体調不良が予測できるとは考えにくいため、就業規則を確認しておきましょう。
家族の用事
子どもの通院に付き添う・親族が訪ねてくるなど、家庭の事情は有給申請が取得しやすい理由の1つです。通院予定や子どもの行事など、前もって分かる予定は早めに伝えておくと、よりスムーズに有給を取得できます。
有給を理由もなく断られたときの対処法
企業側は理由なく従業員の有給申請を拒否できません。社員が時季変更権や計画年休にあたらない有給を申請したにもかかわらず、許可が下りなければ労働基準法違反となります。
有給取得の申請がとおらないときは「なぜ取得できないのか」「いつなら取得できるのか」を必ず確認し、違法の疑いがあるなら労務管理部門・労働組合・労働基準監督署・弁護士などに相談しましょう。
有給を取得できない理由を確認する
有給取得の許可が下りなかったときは、まずなぜ有給を取得できないのかを確認します。これまで説明したように、有給は私用や特別な理由がなくても取得できる労働者の権利です。
理由によって有給を拒否する行為は違法のため「休まれると困る」「忙しい」など曖昧な理由が返ってきた場合は、労働基準監督署への相談も検討しましょう。
いつなら有給を取得できるか相談する
「忙しい」「人がいない」と有給取得を渋られた場合は、いつなら有給を取得できるか確認しましょう。具体的な日時を上司に決めてもらえば、私用でも安心して有給の取得ができます。また、上司もその日に向けて準備ができるため、お互いに利点があります。
これらを試しても有給休暇を取れなくて困っている方は「有給休暇が取れないのはおかしい?人手不足でも取得できる方法を解説」を参考にしてみてください。
どうしても許可されないときは相談窓口を利用しよう
紹介した対処法を試しても許可が下りなければ、相談窓口を利用しましょう。社内にコンプライアンス関連・労務管理の部署がある場合は、指示や警告を出してくれる可能性があります。また、労働組合も有効な手段です。社内機関に相談しても解決できなければ、各都道府県に設置されている労働基準監督署に相談しましょう。「労働基準監督署で解決できなかった」「パワハラなどのトラブルが重なっている」などの場合は、弁護士の利用も検討してください。
有給取得率は上昇!働きやすい職場を見つけるには
厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」によると、2022年に企業が付与した年次有給休暇日数は、労働者1人あたり平均で17.6日でした。その内、実際に取得された日数は10.9日で取得率は62.1%です。これは1984年の調査開始以来の最高値であり、2015年以降は上昇し続けている推移からも、有給は取得しやすい状況になっています。
産業別で見ると、最も有給取得率が高いのが複合サービス事業で74.8%、続いて電気・ガス・熱供給・水道業で73.7%、製造業が65.8%です。一方、宿泊業・飲食サービス業は49.1%、教育・学習支援業は54.4%と、ほかの職種と比べて有給取得率が低くなっています。
参照元
厚生労働省
就労条件総合調査
必ずしも有給取得率が高い会社が働きやすいとは限りません。しかし、有給のとりやすさは仕事に対するモチベーションの増加や仕事の成果につながりやすく、結果として働きやすい環境である可能性が高くなります。
これから転職や就職を考えている方は、職種や企業ごとの有給取得率も参考にして仕事を探しましょう。休みが多い仕事を詳しく知りたい方は「休みが多い仕事とは?業界別ランキングや正社員と公務員の有給休暇の違いも紹介」のコラムもご覧ください。
有休をとりにくい・理由を求められる・とらない風潮がある、など取得しにくい職場があるのも事実です。「有休をとると仕事が滞ってしまう」「取得できないほど忙しい」と悩んでいる方は、転職を考えてみるのも1つの方法です。
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一人ひとりの経験、スキル、能力などの違いを理解した上でサポートすることを心がけています!
京都大学工学部建築学科を2010年の3月に卒業し、株式会社大林組に技術者として新卒で入社。
その後2012年よりレバレジーズ株式会社に入社。ハタラクティブのキャリアアドバイザー・リクルーティングアドバイザーを経て2019年より事業責任者を務める。