公務員が懲戒免職になったらどうなる?その後の処遇についても解説

公務員が懲戒免職になったらどうなる?その後の処遇についても解説の画像

この記事のまとめ

  • 懲戒免職とは公務員にくだされる「懲戒処分」の中の一つで、解雇に相当するもの
  • 懲戒免職は「欠勤」「秘密漏えい」「セクシャルハラスメント」などでくだされる
  • 懲戒免職された公務員は「退職金(退職手当)」が支給制限される
  • 懲戒免職後、再び公務員職に就くのは難しくなる

公務員として働いている、あるいは公務員職を目指している方の中には、「懲戒免職されたらどうなるの?」「一般企業よりも厳しい処分となる?」と疑問を抱えている人もいるでしょう。公務員が懲戒免職となると、再度公務員を就くのは難しい傾向にあります。また、懲戒免職となった公務員には、退職金が支給されない場合もあるようです。このコラムでは、公務員の懲戒免職の処分内容やどんな理由でくだされるのかを解説しています。

ハタラビット

ハタラクティブは
20代に特化した
就職支援サービスです

求人の一部はサイト内でも閲覧できるよ!

公務員にとっての懲戒免職とは?

懲戒免職(ちょうかいめんしょく)とは公務員にくだされる「懲戒処分」の中の一つです。懲戒免職はいわゆる「クビ(解雇)」に相当するものであり、懲戒処分のうち最も重い罰。懲戒処分は「国家公務員法第八十二条」によって定められており、国家公務員や地方公務員が社会通念に反することや法規に触れる行いをした場合に適用されます。以下を詳しく見ていきましょう。

免職

職員の意にかかわらず、その職を失わせる処分。懲戒処分の中で最も程度が重いものといえます。

停職

一定の期間、職務に従事させず無給とする処分。国家公務員の場合は最低一日、最高一年と定められています。「知っておきたい!停職ってどんな処分なの?」では停職処分について詳しく解説。気になる方はこちらもあわせてご一読ください。

減給

一定期間、職員の給与を減額して支給する処分。国家公務員の場合、減給期間は最高で一年、減給額は俸給の20%以内と定められています。地方公務員の場合はこの限りではなく、各自治体の規定によって異なるようです。

戒告

規則に反した者や信用失墜行為を行った者に始末書を提出させ、その将来に対し戒める処分です。
これらの処分の決定に不服がある場合は、申し立てることが可能です。懲戒免職となった場合は訴訟に発展し、司法の判断に委ねる場合も少なくありません。

懲戒免職と懲戒解雇の違い

懲戒免職は公務員に適用される法律で制定された処罰、「懲戒解雇」は民間企業で適用される懲罰というのが違いです。呼び方が異なるだけで、どちらも最も重い処分ということに違いはありません。ただし、懲戒免職がくだった公務員は氏名・勤務先・処罰内容などが公表されますが、一般企業に勤める会社員の場合は懲戒解雇されても世間的な公表には至りません。国や自治体に所属し、税金から給与を支払われている公務員は、民間の正社員より厳しい処罰になります。
懲戒解雇についてもっと詳しく知りたい方は、「懲戒解雇が転職に与える影響とは?再就職を成功させる方法を解説!」もあわせてご覧ください。

未経験OK多数!求人を見てみる

公務員が懲戒免職になる事例とは?

懲戒免職は「欠勤」「秘密漏えい」「セクシャル・ハラスメント」「横領」などさまざまな理由で適用されます。人事院が定める「懲戒処分の指針」をもとに、懲戒免職に該当する事例をまとめました。

欠勤

正当な理由のない欠勤が21日以上続いた職員は免職または停職の処分がくだります。

違法な職員団体活動

「国家公務員法第九十八条」第二項にある「怠業」に該当する違法行為を行為を企て、実行や共謀をそそのかす、あるいはあおった職員は免職または停職の処分がくだります。

秘密漏(ろう)えい

職務上の秘密を故意に漏えいし、公務運営に大きな損失を与えた職員は、免職または停職の処分がくだります。このとき、自身の不正な利益を得る目的で秘密を漏えいした職員は停職の余地なく免職の扱いです。

不当な取引制限などに関与する行為

いわゆる入札談合に該当する行為を行った、あるいは関与した職員は免職または停職の処分がくだります。入札談合とは、物品の公共調達や公共工事に関わる入札において、企業に対して予定価格などの情報を示したり、受注金額を定めたりして、競争の取りやめをほのめかす行為のことです。

公的な文書の不適正な取扱い

公的な文書の変造や偽造、虚偽の文書を作成や内容の改ざん、文書の破棄をした職員は免職または停職の処分がくだります。

セクシュアル・ハラスメント/パワー・ハラスメント

職場において他者を不快にさせる性的な言動、脅迫や膀胱に該当するわいせつ行為、上司・部下の関係を利用した性的関係の強要などを行った職員は免職または停職の処分がくだります。
このほか、性的な内容の電話やメール、身体的な接触、つきまとい行為、パワー・ハラスメント行為などにより、相手に心的ストレスを与え精神疾患に罹(り)患させた場合も、同様の処分です。

横領・窃取・詐取

公金官物に関して、横領・摂取・詐取をした職員は免職となります。
なお、公金官物に限らず、他者の所有物を横領した場合、恐喝や詐欺行為で財物を強取した場合なども免職または停職の処分対象です。

放火・殺人

公務外非行関係に該当する放火・殺人をした職員は免職となります。

麻薬物の所持

危険ドラッグ(覚醒剤、大麻、あへんなど)を所持している、使用した、譲渡を行った職員は免職となります。

淫行

金銭などを対償に18歳未満の者と淫行をした職員は、または供与することを約束して淫行をした職員は免職または停職の処分対象です。

飲酒運転

飲酒運転および酒気帯び運転をした職員は免職または停職の処分対象です。また、飲酒運転により人に怪我をさせたり死亡させたりした場合は、免職となります。このとき、運転手に飲酒の提供および飲酒をすすめる行為をした職員、飲酒状態にあると知っていながら同乗した職員も、免職・停職・減給・戒告のいずれかの処分対象となります。

交通事故

交通事故により死亡させた、あるいは重篤な障害や怪我を負わせた職員は、免職・停職・減給のいずれかの処分がくだります。

上記で紹介した内容は人事院が公表している「懲戒処分の指針」内にある「標準例一覧」でも確認できます。
また、「民間と公務員の違いとは?!働き方の違いを解説」では公務員の基本的な仕事について解説していますので、罰則以外の業務内容に興味のある方はご一読ください。

参照元
人事院
懲戒処分の指針について

懲戒免職になった公務員のその後はどうなる?

懲戒免職された公務員が抱えるリスクは「退職金(退職手当)の支給制限」と「再び公務員職に就く困難」の2つ。以下で詳しく解説します。

懲戒免職になった公務員には退職金が支給されない?

国家公務員退職手当法第十二条」によると、懲戒免職処分を受けた職員は退職金(退職手当)を全額、または一部が支給されない可能性があります。公務員は一般企業と異なり、賃金支給額は地方条例や法律よって定められているもの。退職金も同様に、法令に基づいて支給基準が制定されています。懲戒免職となった場合は、第十二条に即した対処が行われると覚えておきましょう。

退職金の支給は不服申立てが可能

退職金の支給に関して不服であれば申立てることも可能です。基準に比べて処罰が重すぎる、そもそも事実とは異なる、他処分で済むはずなのに懲戒免職にされている、といった場合には処分に対する審査を請求できます。ただし、審査請求ができるのは処分を告知された翌日以降の三ヶ月以内。不服を申し立てる場合は後回しにせず早めに動き出しましょう。

年金や失業保険は支払われる

公務員が懲戒免職になっても、基本的に年金は問題なく支払われます。しかし、禁錮以上の刑に処せられたとき、組合員が懲戒処分を受けたときは、その方が支給を受ける「退職年金」または「業務障害年金」の額の全部または一部が支給されないことがあります。
また、懲戒免職の場合は「自己退職」扱いになるため、失業保険の受け取りまで3ヶ月の待機期間があり、給付日数も少なくなってしまうでしょう。

懲戒免職されると再び公務員職に就くのは難しい

国家公務員法第三十八条」によると、国家公務員で懲戒免職になった場合、処分がくだった日から2年間の間は官職に就くことはできません。地方公務員の場合も「地方公務員法第十六条」に同様の規定が定められており、懲戒免職の処分から2年経たない間は職員にはなれず、職員採用試験の選考を受けることも不可能です。

懲戒免職になる公務員はどれぐらいいる?

人事院が公表した「令和2年10-12月期における懲戒処分及び分限処分等の状況について」の報告によると、令和2年10~12月の間に懲戒処分を受けた者は76人。その内訳は、免職8人、停職15人、減給33人、戒告20人という結果です。ほかの処分件数に比べ、免職はやや少ないと分かります。ちなみに、免職処分人数は平成31年が26人、平成31年は18人でした。ここ数年間においては、年間で免職処分となる職人は30人に満たないといえるでしょう。

参照元
人事院
令和2年10-12月期における懲戒処分及び分限処分等の状況について

懲戒免職からの再就職に行き詰まったときの対処法

公務員としての職場復帰が難しいため、民間企業への再就職を検討する方もいるでしょう。しかし、免職処分を受けてしまった公務員が一般企業に就職しようとしても、現実的には厳しい場合が多いのが実情です。
懲戒免職を受けた事実を履歴書や職務経歴書に記載する義務はありませんが、面接で前職の退職理由を聞かれたときに嘘をついたり曖昧にしたりするのはNGです。仮に免職されたことを隠したまま選考を突破できたとしても、入社後に企業に知られた場合、「経歴を偽った」とみなされる可能性が高いです。

組織に所属しない働き方を考えてみる

正社員として企業に就職するのが難しい場合は、フリーランスで仕事を探したり、起業したりなど、すでにある組織に所属しない働き方を選択するのも一つの手段です。ただし、フリーランスとして生計を立てるにはどの分野でもある程度のスキルが必要となります。「知りたい!自宅で稼ぐ方法と注意点」の記事ではおすすめのフリーランス職種を紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

就職・転職エージェントを利用する

「やはり正社員として働きたい」「フリーで稼げる自信がない」といった理由で民間企業への再就職を目指すなら、就職・転職エージェントを利用するのがおすすめです。経験豊富なアドバイザーが就職活動をサポートしてくれるので、懲戒免職のハンデがある方には特に心強いでしょう。

就職・転職エージェントのハタラクティブでは丁寧なカウンセリングを通して利用者一人ひとりの状況に合わせた就職支援を実施。ネガティブな印象にならない履歴書の書き方、面接での受け答えについて、プロのアドバイザーがフォローいたします。「自分には再就職は無理かもしれない…」とお悩みの方は、ぜひこの機会に無料相談にお越しください。

公務員の懲戒免職に関するよくある質問

最後に、公務員の懲戒免職に関するよくある質問にお答えしていきます。ぜひ、参考にしてください。

公務員が懲戒免職される実名が公表されますか?

人事院によると「職務遂行上の行為又はこれに関連する行為に係る懲戒処分」「職務に関連しない行為に係る懲戒処分のうち、免職又は停職である懲戒処分」のいずれかに該当する懲戒処分は、公表するものとすると定めています。しかし、一般企業に勤める会社員の場合は、懲戒解雇されても公表には至らないようです。国や自治体に所属している公務員は、一般企業に勤める正社員よりも厳しい処罰を受けることになります。

参照元
人事院
懲戒処分の公表指針について

懲戒免職と懲戒解雇は違いは?

懲戒免職は公務員に適用される処罰で、懲戒解雇は民間企業で適用される懲罰です。呼び方が異なるだけで、どちらも最も重い処分であることに違いはありません。懲戒免職と懲戒解雇の違いについては、「懲戒免職と懲戒解雇との違いとは?原則や知っておくポイントも解説」のコラムで詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

懲戒免職したことは履歴書に書かないとだめですか?

履歴書には懲戒免職された事実を記入する義務はありません。そのため、履歴書の職歴欄には「退職」とだけ記入すれば大丈夫です。ただし、再就職先で履歴書が用意されており、退職理由の記入欄がある場合は、懲戒免職された事実を記入する必要があります。

懲戒免職になったらもう公務員になれない?

懲戒免職された場合、再び公務員なるのは厳しい可能性があります。このコラムの「懲戒免職されると再び公務員職に就くのは難しい」でもご紹介したとおり、懲戒免職の処分から2年経過しない間は職員にはなれず、職員採用試験を受けることもできません。今すぐに就職先したいと考えている人は、一般企業への転職も検討してみましょう。ハタラクティブでは、求人の紹介から面接対策、応募書類の添削まであなたの転職活動を幅広く支援しています。

この記事に関連するタグ