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パワハラが退職理由の場合は自己都合?会社都合になる根拠や手続きを解説!
更新日
この記事のまとめ
- パワハラとされる行為には身体的暴力や暴言、無視などが挙げられる
- パワハラで退職する前には、有給休暇を取得したり転職先を探したりしておくと良い
- パワハラで退職する際に請求できるお金は損害賠償や慰謝料、残業代などがある
- 会社にパワハラでの退職を認めてもらうには証拠集めが重要
- 転職活動で「パワハラによる退職」とそのまま伝えるのは避けたほうが良い
「パワハラで退職すると自己都合になる?」「退職理由の伝え方はどうすれば良い?」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。このコラムでは、パワハラの定義や退職する際にやるべきこと、請求できるお金を紹介します。また、会社都合退職のメリットやパワハラで退職した後に転職に成功するコツも解説。パワハラが理由で退職したいと考えている方はご一読ください。
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退職理由がパワハラの場合は自己都合?会社都合?
パワハラでの退職は、「会社都合退職」に該当します。ただし、会社側が「会社都合」と認めない場合はハローワークに事実確認ができる証拠とともに申請し、認められる必要があるので注意が必要です。
パワハラによる退職は会社都合が原則
パワハラが理由で退職する場合は、会社都合と認めるのが原則です。
厚生労働省の「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」や、ハローワークインターネットサービス「記入例:雇用保険被保険者離職票-2」をみると、以下のような理由はハラスメントに該当し、会社都合退職となりうる理由として表記されています。
・事業主または他の労働者から就業環境が著しく害されるような言動(故意の排斥、嫌がらせ等)を受けたと労働者が判断したため
・妊娠、出産、育児休業、介護休業等に係る問題(休業等の申出拒否、妊娠、出産、育児等を理由とする不利益取扱い)があったと労働者が判断した場合
パワハラの場合、「上司の指導に耐えられなかった自分の責任」と思ってしまい、自己都合と捉えられてしまう人もいるといわれています。しかし、これらの退職理由はハラスメントとして「会社都合退職」が認められると理解しておきましょう。
企業側が会社都合と認めない可能性もある
パワハラを行う会社のなかには、パワハラの事実や会社都合退職を認めず、自己都合退職するよう促される場合もあります。なぜなら、パワハラによる会社都合退職の場合、専門機関によって事実確認の調査や指導が行われることがあり、それを避けたいと考える会社もあるからです。
しかし、会社都合と自己都合では失業給付の受給に違いがあるため、自分の意に反して「自己都合」とされては不利益を被ってしまいます。会社から自己都合を促されたとしても、「パワハラを受けた」と感じているなら異議を唱えましょう。
ただし、会社と労働者の退職理由に食い違いがある場合、特定受給資格者・特定理由離職者として
して認定されるには、ハローワークに事実確認ができる証拠を提出する必要があります。証拠として認められる書類に明確なルールはなく、同じ職場の社員2名による証言を書面で出すのが一般的です。
退職時の「会社都合」と「自己都合」の違い
「会社都合退職」とは、会社の倒産をはじめ、解雇やリストラなど会社側の都合によって雇用契約を終了することです。一方、「自己都合退職」とは、転職や結婚など労働者側の都合で雇用契約を終了することを指します。上記2種類のどちらかに該当することで、失業手当の受給給付が異なるため、事前に知っておくと良いでしょう。失業給付の受給内容の違いについては、次の項で詳しく解説します。
参照元
厚生労働省
基本手当について
ハローワークインターネットサービス
雇用保険の具体的な手続き
パワハラの例とは
パワハラとは、職務上の地位や優位性のある人が、業務の範囲を超えて精神的または身体的な苦痛を与えることを指します。厚生労働省の「パワーハラスメントの定義について」によれば、パワハラとされる行為は、大きく分けて「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」「過大な要求」「過小な要求」「個の侵害」の6つです。
暴行や傷害などの「身体的な攻撃」
上司や先輩から物を投げつけられたり殴られたりしたら、それはパワハラです。また、実際に殴られていなくても、胸ぐらを掴むことや、狭い会議室で危険なものを振り回すといった危険な行為は「身体的な攻撃」としてパワハラと見なされます。
脅迫や暴言などの「精神的な攻撃」
仕事のミスについて何時間も説教されたり、ほかの社員がいる前で叱責されたりするのもパワハラに該当します。精神的な攻撃は一見して分かりにくいケースもあり、たとえば「やる気があるのか?」「学生から出直せ」などは暴言とまではいえないと思う人もいるようです。しかし、これらは人格否定と見なされ、上司が日常的にこのような発言をしているならパワハラと認定される可能性が高いでしょう。
仲間外しや無視などの「人間関係からの切り離し」
「人間関係の切り離し」は、1人だけ別室で朝から夕方まで自主学習をさせるなど、労働者を孤立させる行為です。指導が行き過ぎた例とは異なり、組織的なパワハラ行為といえるでしょう。そのほか、挨拶をしても無視するなど、いわゆるいじめのような状況はパワハラと認定される可能性が高いです。
「過大な要求」と「過小な要求」
「過大な要求」とは、明らかに達成不可能な目標を課したり、過度に膨大な量の仕事を与えたりすることです。反対に「過小な要求」は、事務職として入社したのに一日中草むしりをさせられるなど、能力よりも明らかに低い業務を与え続ける行為をいいます。
私的なことに過度に立ち入る「個の侵害」
スマホを勝手にのぞく、私生活の話を執拗に聞く、などが「個の侵害」です。何を侵害と思うかは人によって異なるため、「そんなつもりではなかった」という例も多いといわれています。たとえば、休日の過ごし方を聞くことについて、「興味を持ってくれて嬉しい」と感じる人もいれば、「プライベートなことを聞かれたくない」と感じる人もいるでしょう。
そのため、同じ行為でも受け取る側によってパワハラか否かが分かれます。つまり、相手が嫌がることを執拗に聞くのが「個の侵害」です。そのほか、個人情報を勝手に他言するなどもパワハラと見なされます。
過度な仕事の監視もパワハラに該当する
業務遂行に不必要と思われる過度な監視をされている場合も、パワハラに該当することがあります。たとえば、仕事中に何度もパソコンの画面を覗きこまれたり、トイレ休憩の回数をチェックされて注意を受けたりしたときなどが挙げられるでしょう。行動を過度に監視する行為は、「個の侵害」に該当する可能性があります。実際には、自分が受けた行為がパワハラなのか判断が難しい場合もあるでしょう。「パワハラで怖い思いをした」「パワハラで退職したい」とお悩みの方は、「パワハラ対策でストレスを溜めない!ハラスメントの原因や対処法を徹底解説」もご覧ください。
参照元
厚生労働省
第8回労働政策審議会雇用環境・均等分科会
パワハラが理由で会社都合退職するメリット
この項では、会社都合で退職するメリットを紹介します。先述したように、パワハラに該当する行為によって仕事を辞めることを余儀なくされた場合は、会社都合退職が可能です。その場合、失業給付の受給内容が優遇されることがあります。
失業給付が早く受給できる可能性がある
パワハラが理由の会社都合退職であれば、失業給付の申請後、ハローワークで求職申込みを行ってから約1ヶ月後(初回認定日から約1週間後)に初回の給付金が振り込まれます。
一方、自己都合退職の場合は待機期間7日間のあと、2ヶ月の給付制限期間(5年間で3回目以降の退職では3ヶ月)が設けられているため、給付金を受給できるのは、会社都合退職よりも遅くなるでしょう。
基本手当の支給日数が長くなる可能性がある
パワハラが理由の会社都合退職は、会社の倒産や解雇などと同様に特定理由離職となります。そのため、自己都合退職よりも、雇用保険の基本手当の給付日数が長くなる可能性があるでしょう。
失業給付の支給 | 会社都合 | 自己都合 |
---|---|---|
支給開始日 | 7日後(最短) | 2カ月7日後(最短) |
給付日数 | 90~330日 | 90~150日 |
会社都合退職の詳細については、「会社都合のときに退職届は必要?自己都合退職との違いや書き方・例文も解説」もあわせてご覧ください。
また、失業手当支給日数の3分の1以上を残した状態で再就職ができると、「再就職手当」の申請が可能です。この場合、再就職した職場で働きながら給付金も受け取れるので、失業手当のみよりも収入が増える可能性があるでしょう。
会社都合で退職するデメリットはある?
パワハラで会社都合退職をする場合、次の転職先を探す際の履歴書で「会社都合により退職」と記載する必要があります。会社に解雇された場合も会社都合として認定されることのがあるので、応募先企業の採用担当者から「前職を解雇されたのではないか」「トラブルを抱えた人なのではないか」と不信感を与える可能性があるでしょう。転職活動で不利にならないためには、履歴書に「会社都合により退職」とあわせて、具体的な退職理由を記載しておくのが賢明です。
参照元
厚生労働省
「給付制限期間」が2か月に短縮されます ~令和2年10月1日から適用~
ハローワークインターネットサービス
基本手当の所定給付日数
パワハラで退職する際に請求できるお金
パワハラで退職する際に請求できるお金は、「損害賠償・慰謝料」「残業代」「労災保険」の3種類です。なお、会社に退職金制度がある場合は退職金も請求できます。
損害賠償・慰謝料
パワハラで退職する場合、会社側に損害賠償を請求できます。また、パワハラをした加害者には慰謝料を請求することも可能です。会社は、従業員が安全に働ける環境を整える義務があるため、パワハラを防止できなかった場合は会社側の責任となります。
参照元
e‐Gov法令検索
労働基準法 第四百十五条(債務不履行による損害賠償)
残業代
長時間労働でサービス残業を課されていた場合、未払いになっている残業代を請求できます。パワハラによって未払いの残業代がある方は、残業代の請求を行いましょう。そのほか、ボーナスや各種手当も未払い賃金として請求可能です。
参照元
厚生労働省
未払賃金が請求できる期間などが延長されています
労災保険
身体的・精神的な攻撃によって体調を崩してしまい、病院を受診した場合は労災保険の受給が可能です。なお、直接業務に関係のない加害であっても、労災が適用される場合があります。
2020年6月からは、厚生労働省の「精神障害の労災認定基準に『パワーハラスメント』を明示します」にもあるように精神障害の労災認定基準として、パワハラが認められるようになりました。
退職後でも労災の請求は可能
パワハラが原因で退職し、しばらく経ってから心身の病気が発症した場合にも労災の請求は可能です。ただし、精神疾患の場合はストレスの原因が一つではないケースが多く、労災と認定されるのが難しい側面もあります。過度な長時間労働や明らかなパワハラがあった場合は、証拠を残しておくのが大切です。
退職金
退職金制度がある場合は、退職金を請求できます。パワハラを受けたからといって退職金が増えるわけではありませんが、会社都合退職の場合は割り増しを請求できる可能性も。あらかじめ、就業規則で退職金の有無や条件を確認しておきましょう。
退職する前にパワハラの改善を試みよう
パワハラを受けてすぐに退職するのは悪いことではありませんが、辞めずに解決する方法を探るのも一つの方法です。窓口に相談することでパワハラが解消され、仕事を続けられる可能性もあります。
窓口への相談
パワハラで悩んでいるなら、まずは社内の相談窓口に伝えて原因を解消するのがおすすめです。それでも問題が解決されない場合は、厚生労働省のほっとラインや法律事務所への相談も視野に入れてみましょう。パワハラの相談窓口は、大きく分けて以下の3つがあります。
1.社内の相談窓口
パワハラ防止措置として、社内に相談窓口を設けるのは事業主の義務となっています。中小企業の場合は、総務部や人事部が窓口を担当しているケースが多いようです。
社内の相談窓口では、パワハラの中止を求めることができます。具体的には、異動や配置転換のほか、パワハラ行為を行った社員への処分などが考えられるでしょう。
参照元
厚生労働省
労働施策総合推進法に基づく「パワーハラスメント防止措置」が中小企業の事業主にも義務化されます!
2.公的な相談窓口
過度な残業や賃金の未払いといった悩みを相談するには、厚生労働省の委託事業である「ほっとライン」がおすすめです。「ほっとライン」では、専門知識を持った相談員に無料で相談できるのがメリット。パワハラについては専門の相談先を案内されるようですが、法律や過去の判例について知ることができ、問題解決に役立つ話が聞けるでしょう。
そのほか、厚生労働省の「総合労働相談コーナー」であれば、いじめやパワハラも窓口で相談可能です。パワハラで退職したいときの相談先については、「パワハラの相談が無料でできる窓口はどこ?労働基準監督署についても解説」もあわせてご参照ください。
参照元
厚生労働省
労働条件相談ほっとライン
総合労働相談コーナーのご案内
3.法的な相談窓口
「パワハラによって心身の病気になった」「未払い賃金がある」などの事情で、慰謝料や損害賠償の請求も検討したい場合は弁護士に相談しましょう。ただし、弁護士への相談は費用がかかるため、その点を承知のうえで法的措置の目的を明確にするのが大切です。
退職する前に休職する
心身に不調を来しており、会社に行くのが苦痛な場合は休職する方法もあります。一般的に休職中は給料が支払われませんが、パワハラが原因の場合は休業補償として平均賃金の6割が支給される可能性が高いでしょう。あるいは、労災として認定されれば、労災保険から賃金の一部が補償されます。
パワハラが理由で退職する前に注意すべきこと
パワハラを理由に退職することは十分に可能です。しかし、パワハラから抜け出したい一心で衝動的に退職してしまうと、後々企業側から損害賠償を請求されたり、給料が支払われなかったりと、自分が不利になる状況に陥る恐れがあります。
ここでは、パワハラが理由で退職する際に注意すべきことを解説するので、「もっとこうしておけば良かった…」と悔しい思いをしないためにも、あらかじめ確認しておきましょう。
パワハラが理由で退職する前に注意すべきこと
- 企業の就業規則を確認する
- 確実な証拠を集める
- 医師の診断書を準備する
- 職場の人に伝えずに転職先を探す
1.企業の就業規則を確認する
退職後にパワハラの認定を巡ってトラブルとなる恐れもあるため、就業規則に記載のパワハラ防止措置について確認しておきましょう。前述の通り、企業にはパワハラ防止措置を行う義務があり、就業規則にもパワハラを行った人への対処方法や方針を記載することになっています。企業側の対処が適切だったかを確認するためにも、規則を確認しておくのが大切です。
また、給料や残業代、退職金などのルールも確認しておき、不当な未払い賃金が発生しないようにするのも必要といえます。
2.確実な証拠を集める
パワハラを立証するためには、会社がパワハラの事実を否定できない確実な証拠が必要です。たとえば、スマートフォンやボイスレコーダーによって暴言や脅迫などの音声を録音したり、暴行があった場合は負傷した箇所の写真を撮っておいたりすることで、証拠として提出できます。
「パワハラの記録」となる証拠を残しておくことで、「自己都合退職」から「会社都合退職」にするようハローワークへ申し立てることも可能です。裁判となった場合にも有利になるので、自分の身を守るためにも、十分な証拠を集めましょう。
パワハラに該当する具体的な例については、このコラムの「パワハラの例とは」で解説している6つの類型を参考にしてください。
3.医師の診断書を準備する
「暴行によって負傷した」「暴言によって精神を患った」という場合は、医師の診断書を準備しておきましょう。医師の診断書や通院記録は、パワハラによって身体的・精神的な苦痛を与えられた証拠となり得ます。診察時に、どこをどのくらい殴られた、蹴られたのかなど、パワハラを受けた状況を詳細に説明することが重要です。
4.職場の人に伝えずに転職先を探す
気持ちに余裕がある場合は、退職する前に転職先を探しておくのがおすすめです。ただし、転職先を探す場合は職場の人には伝えないほうが良いでしょう。パワハラを理由に退職する場合、早すぎる報告によって嫌がらせが増えたり、退職を妨害されてしまったりする恐れもあります。退職前に転職先を探したいと考えている方は、「働きながら行う転職活動のやり方と流れ」を参考にしてみてください。
パワハラによる退職勧奨を受けた場合の対策とは
不当に退職を促される「退職勧奨」がパワハラと認められるケースもあります。退職勧奨とは、会社側から「辞めてもらえないか」と促されることです。解雇とは異なり一方的に辞めさせられるわけではありませんが、執拗に退職勧奨を受ければ辞めざるを得なくなることも。この項では、パワハラに該当する退職勧奨を受けた際の対策について解説します。
退職勧奨を受けても辞める義務はない
退職勧奨は、退職について会社と労働者の合意を目指すものです。退職勧奨を受けても辞める義務はないので、断っても問題ありません。退職を断っても執拗に退職勧奨を受けた場合は明らかなパワハラとして認められ、慰謝料を請求できる可能性もあります。
条件を提示して辞めるのも手
退職金や退職日、退職理由などの条件を提示して、ある程度納得のいく形で退職を受け入れるのも一つの手です。退職勧奨によって会社を辞める場合、退職金が通常より上乗せされるのは珍しいことではないため交渉の余地もあります。
また、退職日は会社に強制されるものではないので、退職までの期間をやや長めに取るのも可能です。なお、退職勧奨における退職理由は「会社都合」になるのが一般的。「自己都合にしてほしい」と迫られても断りましょう。
自己都合で退職しても会社都合に変更できる
「退職を迫られ自己都合を認めてしまった」という場合、退職後でも会社都合に変更できる可能性があります。退職理由を変更する際は、証拠を揃えてハローワークに相談しましょう。たとえば、執拗に退職勧奨を受けたメールや音声の録音などが証拠となります。また、パワハラによって心身の病気になった場合は医師の診断書も有効です。
パワハラが理由での退職手続きの流れ
冒頭でも触れたように、パワハラで辛い経験をしたとしても、退職手続きの手順はしっかりと進めましょう。「無断欠勤する」「突然退職届を出す」など、正式な手順を踏まずに行動を起こしてしまうと、会社側から損害賠償を求められる恐れがあります。退職を巡ってトラブルにならないよう、必要な手続きを把握したうえで慎重に対応しましょう。
パワハラが理由での退職手続きの流れ
- 退職することは約1ヶ月前までに伝える
- 退職届に「パワハラが理由である」と書く
- 会社の健康保険を継続するか考える
- 年金の支払いが難しい場合は猶予制度を使う
1.退職することは約1ヶ月前までに伝える
退職の意思は、退職日のおよそ1ヶ月前までに直属の上司に伝えましょう。基本的に、退職の表明時期は会社の就業規則に規定されていますが、記載されていない場合もできるだけ日にちに余裕を持って退職届を提出することが大切です。
ただし、法律上は「退職日の2週間前までに意思表明を行えば問題ない」とされています。そのため、心身の不調ややむを得ない事情によって出社できない場合は、2週間前までに退職届を送付しましょう。
退職を決めてから有給休暇を取得してもOK
有給休暇が残っているなら、退職までに消化しても問題ありません。パワハラが原因の場合、退職の意思を伝えたあとの出社が一層苦痛になる場合もあるでしょう。そのようなときは、有給休暇を使ってパワハラを行う上司と会わないようにするのも手です。
2.退職届に「パワハラが理由である」と書く
パワハラで退職する場合は、退職届にもパワハラが退職理由であることを明記してください。そうすることで、あとからパワハラの慰謝料を請求できる可能性があります。
また、会社都合退職をする場合、退職届に「一身上の都合により」と記載するのは避けましょう。「一身上の都合」とは、一般的に自己都合退職の際に使用する表現です。この記載があると、会社都合退職であることが認められにくくなる可能性があります。
退職届と退職願いは異なるので注意
退職に際して会社に提出する書類は、退職届でも退職願いでも基本的に問題ありません。ただし、退職届が「退職の通告」であるのに対し、退職願いは「願い出る」ための書類なので却下される可能性もあります。退職の意思表明が済んでいる場合は、退職届を提出して正式に認めてもらうのが一般的な流れです。
3.会社の健康保険を継続するか考える
退職すると、会社で加入していた健康保険が利用できなくなるため、以下のいずれかを選択する必要があります。
・国民健康保険に加入する
・家族の被扶養者になる
・会社の健康保険を任意継続する
会社の健康保険の被保険者である期間が2ヶ月以上あった場合は、2年間継続加入することも可能です。
参照元
全国健康保険協会
トップページ
4.年金の支払いが難しい場合は猶予制度を使う
退職した場合は、それまでの厚生年金から国民年金に自動的に変更になります。しかし、失業期間中の年金の支払いが難しい場合は、保険料の猶予制度があるため利用すると良いでしょう。未納にしてしまうと将来の受給額が減るため、猶予制度の手続きを行うのがおすすめです。
参照元
日本年金機構
国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度
パワハラに関する主な判例
ここでは、独立行政法人労働政策研究・研修機構の「パワーハラスメントに関連する主な裁判例の分析」から、実際にあったパワハラによる慰謝料請求に関する判例についていくつかご紹介します。どのような行動がパワハラとして認められたのか、参考にしてみてください。
「精神的な攻撃 」に関する例
【請求】損害賠償等請求
【当事者の関係性】上司 ⇒ 部下(SC所長:Y ⇒ 課長代理:X)【言動に至る背景】Xはエリア総合職の課長代理という立場であるにもかかわらず処理件数が少なく、上司のYからすれば、Xには業務に対する熱意が感じられなかった。そのため、Yは下記「言動の具体的内容」記載の言動に及んだ。
【言動の具体的内容】Yによる言動のうち、本件で争点となったのは、おおよそ以下の言動である。
Yが、「意欲がない、やる気がないなら、会社を辞めるべきだと思います」などと記載した電
子メールをXとその職場の同僚に送信したこと。
【結論】
本判決は、行為者(Y)について、上記言動につき不法行為責任(名誉毀損)を肯定した。
本判決は、慰謝料額の文脈において、「本件メール送信の目的、表現方法、送信範囲等を総合すると、Yの本件不法行為(名誉毀損行為)によるXの精神的苦痛を慰謝するための金額としては、5万円をもってすることが相当である」とした。
参照元
独立行政法人労働政策研究・研修機構
第3章 分析対象裁判例の整理表(28p)
「精神的な攻撃、過小な要求、個の侵害」に関する例
【請求】地位確認等請求
【当事者の関係性】経営管理層 ⇒ 現場医師(院長ら ⇒ 内科医長:X)【言動に至る背景】Xにおいては、A病院の取決めに反し、
・午前9時とされている外来の診療開始時間をしばしば守らず、
・院長に相談することなく保険適応外であるノロウィルスの抗原検査を行ない、
・分掌された血液透析患者の年金に関する書類の作成を相当程度怠り、
・必要な手続きを行なわずにカルテを借り受けたままにし、
・個人所有の端末機を無許可でYのインターネット回線に接続し、
・Yの指示に反して駐車場所を変更しない、
といった問題行動が見られたため、YはXを解雇するに至ったが、解雇それ自体を含む下記「言動の具体的内容」記載の言動は、YによるパワーハラスメントであるとしてXは本件提訴に至った。
【言動の具体的内容】Y側による言動のうち、本件で争点となったのは、おおよそ以下の言動である。
(1)Xの受持ち患者数を減らしたこと。
(2)Xよりも医師免許取得が遅くA病院での勤務開始も遅いL医師とXとの人事上の序列の逆転。
(3)院長による退職勧奨、Yによる解雇の意思表示後に事務長がXに対し退職金を現金で持参したこと、YがXに無断で医師会退会届を作成・提出したこと。
(4)Xが病院内で使用する部屋のドア上部に防犯カメラを設置したこと。
(5)YがXを解雇したこと。
【結論】
本判決は、行為者(使用者:Y)について、「YがXに対して不法行為・債務不履行責任を負うものとは認められず、Xの損害賠償請求…は理由がない」とした。
退職と損害賠償の事例については、「退職して損害賠償になる事例は?法律を知ってトラブルを防ごう」でも解説しています。こちらもあわせてご覧ください。
参照元
独立行政法人労働政策研究・研修機構
パワーハラスメントに関連する主な裁判例の分析
転職の面接ではパワハラの退職理由の伝え方が重要
転職活動を行う場合、面接の場で退職理由を聞かれても「パワハラによる退職」とそのまま答えるのは避けたほうが良いとされています。パワハラの定義については、前述した厚生労働省による判断基準はあるものの、人によっては「ストレス耐性がないのでは」「パワハラの原因は本人にも問題があるのでは」と懸念を抱かれるリスクがあるためです。
転職理由を聞かれた際は、できるだけポジティブな退職理由に言い換えて、採用担当者に好印象を与えることが転職成功への近道といえるでしょう。
『退職理由が「仕事が合わない」の例文を紹介!印象を下げない伝え方のコツ』では、退職理由を上手に伝えるためのコツをまとめています。こちらも合わせてご覧ください。
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その後2012年よりレバレジーズ株式会社に入社。ハタラクティブのキャリアアドバイザー・リクルーティングアドバイザーを経て2019年より事業責任者を務める。
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