残業70時間は問題ない?毎月続くと体調に影響がでる可能性も?

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この記事のまとめ

  • 残業70時間は平均的な量から逸脱しているので普通の状態とはいえない
  • 残業70時間が常態化している場合、労働基準法違反である可能性が高い
  • 残業が70時間になると心身の健康を害したりストレスをため込んだりする恐れがある
  • 残業を減らすために仕事を効率化したり転職活動を考えたりするのも効果的

残業時間が70時間を超えている方へ。会社や担当業務によって残業時間は異なりますが、月当たり70時間の残業は普通なのでしょうか。このコラムでは、平均的な残業時間をもとに、「月70時間の残業」は普通なのか、続けるとどんな影響が出るのかをまとめました。また、多すぎる残業を減らす方法についても解説。残業時間や勤務環境で悩んでいるなら、参考にしてください。

月70時間は普通?平均的な残業時間とは

残業が70時間以上という状態が平均的でないことは、厚生労働省が毎月実施している「毎月勤労統計調査」からわかります。
たとえば、「毎月勤労統計調査 令和5年6月分結果速報」によると、パートタイム労働者を除く一般労働者の1ヶ月の所定外労働時間、つまり残業時間は13.7時間でした。残業時間が最も多い運輸業や郵便業であっても、残業時間は26.2時間であり、70時間には遠く及びません。他の業種はこれらの残業時間よりも少ないので、残業時間が70時間というのは決して普通ではないことが分かるでしょう。

参照元
厚生労働省
毎月勤労統計調査 令和5年6月分結果速報

残業70時間は普通?基本的なルールとは

そもそも残業は「所定時間外労働」と「法定時間外労働」に分類されます。さらに、残業を行うには労使間で「36協定」を締結しないと違法に。ここで、残業に関する基本知識を確認していきましょう。

労働時間の基本

労働時間には、労働基準法で定められている「法定労働時間」と、各企業や事業所で決めている「所定労働時間」があります。ベースとなるのは法定労働時間で、1日に8時間、1週間に40時間が原則。法定労働時間を超えて働くことは禁止されているため、「所定労働時間」は法定労働時間内に収まるはずです。

「所定時間外労働」と「法定時間外労働」

「所定時間外労働」とは、所定労働時間を超えた労働時間のこと。所定労働時間を超えるものの、法定時間外労働にはならない場合は、「法内残業」です。
「法定時間外労働」とは、労働基準法で定められている「1日に8時間、1週間に40時間」を超える残業のこと。所定時間外労働は会社が定める規定率で残業代が支払われるのに対し、法定時間外労働の場合は、割増率(残業代)が法律で定められています。残業代については、「残業手当とは?正しい計算方法や基礎知識をご紹介!」でご確認いただけます。

法定時間外労働には36協定が必須

労働基準法で定められている労働時間を超えて残業を行う場合、36協定を締結する必要があります。正社員であれば「1日8時間、週5日勤務」が基本となるため、残業は必然的に「法定時間外労働」になるでしょう。ただし、実働が7時間の会社もあるため、自分の残業が「所定時間外労働」なのか「法定時間外労働」なのか、36協定の締結はされているかを確認しておきましょう。

残業に大きく関係する36協定とは

36協定(さぶろくきょうてい)とは、会社が従業員に対して法定労働時間を超えた時間外労働を求める場合に必要とされる労使協定です。会社は労働組合などと署名による協定を結び、労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。
従業員に法定労働時間の上限を超えて労働させているにも関わらず、協定を結んでいない、労働基準監督署に届け出ていない場合は6ヵ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が課せられます。
残業時間の36協定についてさらに知りたい方は、詳しく書かれたコラム「36協定を違反するとどうなる?時間外労働の上限や法改正のポイントを紹介」もご覧ください。

36協定内でも残業時間の上限はある

36協定を結んだからといって、従業員に上限なく残業させても良いということはありません。
36協定を結んでいたとしても、協定で定める範囲を超える時間外労働をさせることはできず、1カ月で45時間、1年間で360時間など対象期間と限度時間が決められています。

期間残業の上限
1週間15時間
2週間27時間
4週間43時間
1ヶ月45時間
2ヶ月81時間
3ヶ月120時間
1年間360時間

引用元:厚生労働省「時間外労働の限度に関する基準

1カ月の限度が45時間のため、月70時間の残業はあまりにも多いことが分かります。臨時的に忙しいケースには「特別条件付きの36協定」を結ぶことで、上限を超えた残業が可能。「特別条件付きの36協定」を結んでいれば、法律上1年間に6ヶ月以内であれば月70時間の残業も認められます。
しかし、この制度を悪用する企業も存在するため、注意が必要といえます。

みなし残業があっても残業の上限は変わらない

残業時間70時間という状態は、みなし残業を含めても普通ではありません。みなし残業とは、毎月一定の残業をすることを見込んで残業代を支払う制度のことです。
たとえば、月給は25万円であるものの、内訳は基本給20万円と残業代25時間分の5万円と決められているとします。すると従業員の残業時間が25時間に満たない場合でも、会社はみなし残業代を含む月給25万円を支払わなければなりません。一方、従業員が25時間を超える残業をした場合には、追加で残業代が支払われます。
当然ですが、36協定が結ばれていても、1ヶ月あたりの残業時間の上限はみなし残業25時間を含めて45時間。
ただし、企業によってはみなし残業は月給に含まれているため、やって当然という考えが蔓延していたり、みなし残業以外にもさらに残業をするように圧力がかけられたりする場合もあるのです。
みなし残業代が支払われていても労働基準法における残業時間の上限は変わらないので、正しく運用されているかどうかを自分でチェックしましょう。

みなし残業についてさらに知りたい方は、詳しく書かれたコラム「みなし残業制度とは?ルールを正しく理解しておこう!」もご覧ください。

残業70時間の生活とは

残業が70時間になると、プライベートの時間を取ることは極めて難しくなります。1ヶ月あたりの残業時間が70時間ということは、月20日働くと仮定すれば残業時間は平均して毎日3.5時間。19時が定時だとしても終業は22時半です。帰宅しても自由な時間はほぼなく、食事や入浴を済ませてすぐに就寝しないと翌日の仕事に支障が出るでしょう。
せっかくの休日も体を休めることが最優先となり、プライベートを楽しむ時間がなくなってしまいます。このような生活が日常になってしまうと、心身ともに体調を崩してしまう恐れもあるので注意が必要です。

冒頭で使用したデータのように、月の残業が20時間前後の場合は、1日あたり1時間ほどの残業が予想されます。それでも、勤務時間が18時までなら残業をして19時。プライベートの時間は確保できるのではないでしょうか。

残業70時間を続けることで起こる3つのリスク

残業70時間の状態が続くと、まず過労死のリスクが高まります。心身の健康を保つのが難しくなり、日々の業務でも注意力を欠いたり生産性が落ちたりして、思うような結果が出なくなる可能性も考えられます。

1.過労死の危険性がある

残業が70時間になると、過労死の危険性が強まります。
過労死のラインは1ヶ月の残業時間ではなく、2~6カ月の平均が80時間以上か、1ヶ月の100時間を超える残業。しかし、だからといって70時間の残業が何の影響も及ぼさないわけではありません。
残業時間が増えれば健康が害されるリスクも高まります。労災認定基準では、「週40時間を超える時間外・休日労働がおおむね月45時間を超えて長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まる」とあるため、長時間労働がいかに高リスクか分かるでしょう。

脳・心臓疾患の労災認定の引用画像

引用元:厚生労働省「脳・心臓疾患の労災認定(8p)」

2.プライベートの時間がまったく取れない

残業が70時間かそれ以上になると、プライベートの時間を取り分けることはほとんどできなくなるでしょう。
前述したように、残業が70時間になると毎日帰宅するのは夜遅く、時には深夜近くになることも。仕事から帰ってくると疲れ切っていて、夕食と入浴を済ませたらすぐに就寝という生活になってしまうことが予想されます。プライベートの時間が取れないままにしていると、ストレスをため込んだままになり、精神的なバランスを崩す原因になることも。
加えて、プライベートの時間が取れないということは、業務に関する勉強もおろそかになってしまうことを意味しています。日々の業務に忙殺されてしまい、自分のスキルアップを図ることもできません。結果として、昇進する機会やより大きなプロジェクトを担当する機会を失ってしまう恐れもあるのです。

3.生産性が極端に落ちる

70時間の残業が慢性化している場合、従業員の生産性が極端に落ちると考えられます。
残業が70時間になった場合、リフレッシュする時間はほとんどありません。さらに疲れ切っていると、ささいなストレスが大きな負担になることもあります。体を休める時間が少なくなるため集中力が極端に落ちたり、思考力が下がったりするでしょう。
小さなミスが重なったり、作業効率が悪くなったりすると、仕事へのやる気も失われてしまいかねません。仕事の効率が悪くなると、さらに残業が増えるという悪循環に陥る恐れもあります。

残業を70時間にしないための対処法

残業時間を減らすには、仕事を効率化したり環境を整えたりするのが効果的。残業が70時間になってしまうと、仕事や生活にさまざまな支障が生じるため、すぐに対策を講じる必要があります。仕事を長く続け、自分の心身の健康を守るためにも残業を減らすための4つの対処法を見ていきましょう。

1.仕事を効率化する

担当している仕事の量が多くて残業が増えているのであれば、仕事を効率化しましょう。自動化できるものを自動化する、自分のなかで仕事のルーティンを作る、よく使用するものは雛形を作るなど。今まで時間をかけていた仕事をより素早く終わらせることができる場合もあります。ただし、仕事を効率化して残業時間を減らした場合、さらに仕事を任される恐れもあるので注意しましょう。

ときには仕事を断ることも必要

抱える仕事があまりにも多いなど、これ以上自分で担当しきれないと判断したら、ときには仕事を断ることも大切です。自分が無理なくできる範囲の業務に限定すれば、ストレスや残業を最小限に抑えることができます。

2.労働環境を整える

仕事の効率化のほかにも、労働環境を整えることで残業時間を減らすこともできます。一口に「労働環境」といっても、デスク周りの整理整頓など個人的な部分から、人員配置など全体に関わる部分まで幅広いのが特徴。
まずは取り組みやすいデスク周りの整理整頓から始めてみましょう。どこに何があるかを決め、必要以上にモノは置かない。乱雑な環境で業務に取り組んでも、気が散ったり探しものをしたりで集中できません。同じように、社内の資料室や備品周りなども整理整頓するのがおすすめです。
長時間残業の要因が人員不足の可能性もあるので、上司に相談するのもいいでしょう。社員1人に業務が集中していないか、業務が滞りなく進んでいるかを確認するのも役職者の仕事です。現状を詳しく伝えて、具体的な解決策を提案してみてはいかがでしょうか。

3.労働基準監督署に通報する

もし慢性的に月45時間以上の残業が続いているのであれば、労働基準監督署に通報して状況を改善することも可能です。
たとえ労使間で36協定が結ばれていたとしても、慢性的に45時間以上の残業が続いている場合は労働基準法違反の疑いが強く、36協定が結ばれていない、年間の残業時間が360時間を超えているなどのケースは明らかに労働基準法違反です。
労働基準監督署へは匿名で通報することができ、問題があることがわかれば企業に指導や改善命令が出されます。労働基準監督署の指導が入れば、状況が劇的に改善することもあるでしょう。
ただし、労働基準監督署は多くの案件を抱えており、ただ通報するだけでは問題をチェックしてもらえないこともあります。タイムカードなど、残業の実態が客観的に証明できるものを証拠として集めておきましょう。

4.転職活動をする

いろいろ試した結果、状況が改善しないと判断できるのであれば転職活動をするのも一つの手です。ただし、残業時間を理由に転職活動をするなら、転職候補先の人員や業務配分、労務管理といった点をよく調べましょう。
業務内容や企業規模に対してあまりにも人員が少ない場合は、1人あたりの業務量が多い可能性が考えられます。ギリギリの人数で会社を回しているため、休日が少ないなど労働管理が不十分であることも。また、仕事や残業に対する意識についても調べておくと安心。業務時間に関わらず業績など結果を重視する会社は、残業も頻繁にあると予測できます。
長時間の残業が慢性化しているにも関わらず問題視していない、特に対策を講じていない場合は、重要員に対する意識の低さからほかの問題を抱えている可能性が高め。なかには、「残業は当たり前」「役職が上の人が帰らないと終業にならない」といった暗黙のルールを設けている会社もあるようです。
入社前に社内の雰囲気や勤務状況を確認するのは難しいですが、入社してから後悔したり、短期間でまた転職となったりしないように、事前に細かく確認しておくことが大切です。

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